プルオーバーは胸郭を広げる運動であると言われてきました。しかしコアの理論から考えると、肋骨を広げる姿勢は「リブフレア(肋骨が広がった)」と言われており、腹腔内圧が上がらず、良くない姿勢であると言われています。ではどうしたら効果的に行うことができるのか井上先生に聞いてみました。
文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>
肋骨を閉めた状態で行うプルオーバー
プルオーバーは胸郭を広げる運動であると言われてきました。しかしコアの理論から考えると、肋骨を広げる姿勢は「リブフレア(肋骨が広がった)」と言われており、腹腔内圧が上がらず、良くない姿勢であると言われています(写真1− 1)。
プルオーバーの動きは「肩関節の伸展」といって主に広背筋のトレーニングになります。広背筋を収縮、伸展するためにはやはり、体幹は安定していなければならないので、写真1−1のような姿勢では十分に広背筋を使えないということになります。四肢の動きは腹横筋(図1)の収縮から始まります。腹横筋の収縮が速く、強いことが大きな力を出すためには必要になってくるのです。 つまり、おなかの周りでコルセットのような役割を担っている腹横筋が収縮して腹腔内圧が上がることで、強い筋出力を起こせるのです。
腹横筋を収縮させるためには、写真1−2のように横隔膜と骨盤底が平行である必要があります。したがって写真1−1のような姿勢では、強い筋収縮を起こせないということになります。
腰を反った姿勢(アーチバックと呼ばれる)で行うエクササイズで筋肉に効いた感じがするのは、筋肉がしっかり収縮しているというよりもむしろ筋出力が落ちて、軽い重量でも重たく感じるため効いたように思うということも十分に考えられるのでしょうか? 腹圧をしっかり入れることができると、筋出力も増大して、重い重量も比較的上がりやすくなるはずです。
以上のことからプルオーバーを行う際には、アーチバックを行わず、肋骨を閉めて行うことが良いと思います。英語では肋骨を「ロックダウン」、もしくはコアを「エンゲージ」するといいます。今回はプルオーバーにトライセプスエクステンション(上腕三頭筋の運動)を組み合わせた、「プルオーバーエクステンション」という種目について解説していきましょう。
●プルオーバーエクステンションの効用
体幹の安定性の向上
広背筋、上腕三頭筋の強化
●プルオーバーエクステンションの行い方
ダンベルを持って、ベンチに寝る(写真2−1)。
肘を曲げながら、ダンベルを頭の下の位置まで下ろす(写真2−2)。そこからプルオーバー動作を行い、顔の上あたりまでダンベルを引く(写真2−3)。、さらに肘を伸ばして上腕三頭筋を収縮させる姿勢に戻る(写真2−1)。
●リグレッション(原点回帰)とプログレッション(エクササイズの発展)
◎プルオーバーエクステンションのリグレッション
①バーベルプルオーバーエクステンション (写真3−1)
バーベルを用いて行います。バーベルを用いることで、ダンベルよりも安定感を得ることができます。
◎プルオーバーエクステンションのプログレッション
②ワンハンドプルオーバーエクステンション (写真3−2)
片手でダンベルを持って、プルオーバーエクステンションを行います。この場合、体幹の姿勢の保持が難しいので、バランスを崩さないように注意が必要です。上腕の運動に見られるような「単関節エクササイズ」は、機能性を重視したトレーニングにおいて軽視される傾向にあります。しかし、肩関節や肘に衝撃を伴うスポーツにおいては、それらの強化を行うことは障害予防にもつながり、必ず必要になってきます。プルオーバーエクステンションを取り入れることで、体幹の固定を重視しながらエクササイズを行い、その延長線上で上腕三頭筋を強化することも、一つの方法であると思います。もちろんプレスダウンのように単独で鍛えることも「有り」で、要はバランスが大切なのではないかと思います。
提供元・FITNESS LOVE
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