紅海に面するエジプト沿岸のベレニケ遺跡にて、約2000年前に埋葬されたサルの遺骨が複数発見されました。
調査の結果、見つかったサルは、現地の固有種ではなく、インドや中国地方を原産とする「アカゲザル」と判明しています。
これは当時のローマ人やエジプト人が、家庭用のペットとしてインドからサルを輸入していた初の証拠です。
研究は、ポーランド・ワルシャワ大学と米・デラウェア大学により報告されました。
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丁寧な埋葬、「まるで眠った子どものよう」
輸入先に適応できなかった
丁寧な埋葬、「まるで眠った子どものよう」
遺骨の発見当初、研究チームは、アフリカ地方に固有の「グエノン種」と予想していました。ところが、3Dスキャンと骨の比較分析により、インド北部〜中国南部を原産とする「アカゲザル」と判明しています。
同チームのマルタ・オシピンスカ教授は「アフリカの遺跡でインドのサルが見つかった例はなく、驚くべき発見です。ベレニケ・インド間で交易があったのは知られていますが、ペットのサルを輸入していたという記録は残っていません」と話します。
サルの遺骨は、動物の共同墓地にて丁重に埋葬されており、その姿はまるで眠っている子どものようでした。
発見された内の1体は毛糸の布で包まれており、もう1体は大きな貝殻で装飾されていました。2体ともに側には、アンフォラの断片が見つかっています。
アンフォラは、古代の中東〜ギリシア・ローマで使用された縦長の壺で、ブドウやオリーブオイル、ワイン、穀物などを入れるための容器でした。
こうして点からも、輸入されたサルは純粋に家庭用のペットとして重宝されていたようです。
輸入先に適応できなかった
ベレニケの集落は、数千年前の古代エジプト時代から存在しました。紀元前3世紀には、戦闘用のアフリカ象を運ぶための港や軍の前哨地として使用されています。
他方で、ベレニケの港が繁栄し始めたのは、古代ローマ人がエジプトを占領した後のことでした。それ以降、ベレニケは、エジプト〜中東〜インドをつなぐ海洋貿易の中心地となっていきます。
インド洋から紅海を通る交易は、数千キロの航路を数週間かけて行われました。香辛料や織物、その他の贅沢品ならまだしも、サルの輸送には移動中の食料や水分も必要です。
「こうした余分な経費や労力を要するにもかかわらず、ローマ人が単なる娯楽目的でサルを輸入した点で注目に値する交易です」とオシピンスカ教授は指摘します。
しかし、骨の分析から、輸入されたサルたちはまだ若い幼体でした。おそらく、栄養不足や輸出先の環境に順応できなかったことで、若く死んだのでしょう。
サルの輸入がその後も継続的に行われていたかは不明ですが、古代ローマ人の慣習を理解する上で貴重な発見となっています。
提供元・ナゾロジー
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