米・カリフォルニア州のサンディエゴ動物園は、先月6日、最後の野生馬とされる「モウコノウマ」のクローン誕生に成功したと発表しました。

モウコノウマは、絶滅危惧種に指定されており、すでに飼育下で繁殖した個体しか現存していません。

誕生したのはオスの子馬で、世界最初のモウコノウマのクローンとなっています。

目次
数が増えても絶滅リスクが減らない理由とは?
クローンが「種の存続」の救世主となるか

数が増えても絶滅リスクが減らない理由とは?

モウコノウマは、もともと中央アジアの草原地帯に生息していましたが、気候の変化や土地開発、密猟などにより減少しました。

野生種は、第2次世界大戦後に急速に減っていき、1969年を境に野生では目撃されていません。

絶滅危惧にある「モウコノウマ」、”冷凍保存されたDNA”で世界初のクローン誕生に成功!
(画像=モウコノウマ/Credit: wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

野生下のモウコノウマはすでに絶滅宣言されており、現存するのは飼育下で繁殖した約2000頭の個体です。飼育種の数は安定して増やせますが、絶滅リスクの高さは変わりません。

飼育種は、1899〜1902年の間に捕獲された11頭と1947年に捕獲された1頭の計12頭を祖先に持ちます。つまり、現存する2000頭は、わずか12頭の祖先に収束されるため、遺伝的多様性がきわめて乏しいのです。

そうすると、環境の変化やストレス因子に弱く、免疫力も低下してしまいます。伝染病などが発生すれば全滅しかねません。

そのためにも、遺伝的な多様性を増大させる存在が必要となります。

クローンが「種の存続」の救世主となるか

クローン作成に用いられたDNAは、1975年にイギリスで生まれて、1978年にアメリカにやってきた「クポロヴィッチ」というモウコノウマのものです。

クポロヴィッチは、両親が野生種であり、遺伝的多様性に富むため、1980年にDNAを採取し冷凍保存されていました。

サンディエゴ動物園は、野生動物保護団体の「Revive&Restore」、ペットクローニングを専門とする「ViaGen Pets & Equine」と協力し、クポロヴィッチのDNAを使って、クローン胚を作りました。

このクローン胚は家畜馬の代理母に移植し、通常の妊娠プロセスを経て、無事クローンのモウコノウマの出産に成功しています。

絶滅危惧にある「モウコノウマ」、”冷凍保存されたDNA”で世界初のクローン誕生に成功!
(画像=カートと代理母/Credit: Scott Stine/Revive & Restore、『ナゾロジー』より引用)

誕生したクローンは、クポロヴィッチDNAの冷凍保存に携わったカート・ベニーシュケ氏にちなみ、「カート」と命名されました。

研究チームは「クローンが他の個体との繁殖に成功すれば、飼育種に貴重な遺伝的多様性をもたらしてくれるでしょう」と話しています。

カートは、繁殖年齢に達したら、サンディエゴ動物園のサファリパークに移されるとのことです。

果たして、カートは、絶滅の危機に瀕する仲間を救うことができるのでしょうか。


参考文献

sciencealert

interestingengineering


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功