ガラガラヘビは、敵が近づいてくると、尻尾を振って「こっちに来るなよ」という警戒音を出します。

その音が赤ちゃんをあやす「ガラガラ」に似ていることから、「ガラガラヘビ」という和名がつけられました。

そして、このガラガラ音は、想像していたより遥かに洗練されていたようです。

カール・フランツ大学グラーツ校(Karl-Franzens-University Graz・オーストリア)の研究によると、ガラガラヘビは、警戒音の周波数を急に高くすることで、敵の距離感を狂わせているとのこと。

「実際より近くにいる」と思わせるのが目的と考えられます。

研究は、8月19日付けで学術誌『Current Biology』に掲載されました。

目次

  1. ガラガラヘビの「音響トリック」

ガラガラヘビの「音響トリック」

神経生物学を専門とする研究主任のボリス・シャニョー(Boris Chagnaud)氏は、ある日、ラボ内で飼育しているガラガラヘビに近づいた際、威嚇を示すガラガラ音が急に高くなるのに気づきました。

そして、ヘビから離れると、次第に低くなっていったのです。

この現象の背後にある秘密を解明するため、氏と研究チームは、人型のシルエットや黒い円盤などをスクリーン上でヘビに近づけながら、ガラガラ音の周波数を記録しました。

最初のうち、ガラガラ音は一定の割合で上昇し、周波数は40Hzに達しています。

ところが、物体がかなり近づいて来ると、突然、周波数が60〜100Hzに跳ね上がったのです。

ガラガラ音の周波数は、物体が速く近づくほど急激に上昇していました。

ガラガラヘビは「音響トリック」で敵の距離感を狂わせていた
(画像=スクリーン上で黒い円盤を近づける / Credit: Cell Press/youtube-Adaptive rattling fools distance perception(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

次に、なぜ周波数が急に上がるのかを理解するべく、VRを使った仮想空間での実験を行いました。

まず、バーチャルの草原を生成し、その中に仮想のガラガラヘビを忍ばせます。

11人のボランティアには、VR空間でヘビに近づいてもらい、約1メートルのところまで来たと思ったら合図するよう指示しました。

ガラガラ音の周波数は、人が近づくごとに上がり、4メートル以内に入った時点で急に70Hzにまで達します。

すると、11人全員が、その瞬間に1メートルまで来たと判断したのです。

ガラガラヘビは「音響トリック」で敵の距離感を狂わせていた
(画像=VR上の草原、光っている部分にヘビがいる / Credit: Cell Press/youtube-Adaptive rattling fools distance perception(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

シャニョー氏は、これについて「ガラガラヘビは急激に周波数を上げることで、近づいて来る者に聴覚的な錯覚を引き起こしていると考えられます。

つまり、”ガラガラ音は徐々に高くなる”というルールをヘビが突然破ることで、距離がかなり近づいていると思い込ませるのです。

これは、ガラガラヘビが、自分と敵との間にセーフティリードを作るためでしょう」と説明します。

この仮説を立証するため、今度は周波数を急に上げずに実験したところ、参加者はヘビとの距離を正確に推測できるようになりました。

シャニョー氏は、次のように述べています。

「ガラガラヘビは、自分の存在を知らせるために、ただ音を鳴らすだけでなく、革新的な解決策を進化させました。

進化は長い年月を要するプロセスであり、この手法はヘビが何千回、何万回と試行錯誤した結果です。

大きな哺乳類に踏みつぶされないために、距離感を錯覚させるという手法が編み出されたのでしょう。」

公開日:2021.08.21 SATURDAY

参考文献:Rattlesnake rattles use auditory illusion to trick human brains

Rattlesnake rattles trick human ears

元論文:Frequency modulation of rattlesnake acoustic display affects acoustic distance perception in humans

提供元・ナゾロジー

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