インドネシア・スラウェシ島にある洞窟にて、世界最古となる動物壁画が発見されました。
描かれていたのは「スラウェシ・ワーティー・ピッグ(学名:Sus celebensis)」という現地のブタであり、年代は約4万4500年前と推定されています。
研究チームのアダム・ブラム氏(グリフィス大学・オーストラリア)は「ロックアート発祥の地は、長年の定説である氷河期のヨーロッパではなく、古代インドネシアだったかもしれない」と述べています。
研究は、1月13日付けで『Science Advances』に掲載されました。
動物壁画の最古の記録を更新!なぜ「同じブタ」が描かれたのか?
壁画が見つかったのは2017年12月、スラウェシ島にあるリャン・テドンゲ洞窟の中でした。
洞窟は、地元民のブギス族が暮らす小さな谷間にあります。
ブラム氏は
「谷への舗装された道路はなく、そこに行くには、隣接する低地から森に沿った難渋な道を進み、洞窟につながる狭い通路まで抜けなければなりません。これが唯一の道でした」
と話します。
地元民によると、ブラム氏ら以前に西洋の人が洞窟に足を踏み入れたことはないそうです。
洞窟内には少なくとも3つのブタの壁画が見つかりました。
本種は、顔に特徴的なイボがあって、大きいものは体重85キロまで達します。減少傾向にあるものの、今日もまだ生きているとのことです。
幸運なことに、3つのうち、最も状態の良いものが最古の壁画と特定されており、54×136センチの大きさがあります。
お尻の上には、2つの人の手形がステンシルで描かれていました。
向かって右側には、2〜3匹のブタが対峙する形で描かれていますが、状態が悪く、ほぼそれと識別できないとのこと。
さらにチームは、すぐ近くの洞窟の天井にも同様のブタの壁画を発見しました。
こちらも110×187センチと大きく、周囲には人の手形が同じ手法で4つ描かれています。
その洞窟内には他に2匹の動物の絵が見つかりましたが、損傷が激しく何の動物か解読できませんでした。
壁画の材料となっている鉱物を採取し、年代測定をした結果、先の絵は約4万4500年前、天井に描かれた絵は約3万2000年前と推定されました。
これまでの最古の記録は、同チームがスラウェシ島の別の洞窟で見つけた同じブタの絵で、約4万3900年前のものです(Nature、2019)。
このことからもスラウェシ島が、ロックアートのホットスポットになっていたのがうかがえます。
ちなみに、人類最古の壁画は、南アフリカで見つかった約7万3000年前の「ハッシュタグ」のような模様です。
このブタはスラウェシ島に固有の種であり、少なくとも数十万年前から島で独自に進化し、のちに現れる初期人類とも深い関係をもったとされます。
家畜や食用、あるいは民族のシンボルとして、好んで壁画の題材に選ばれたのかもしれません。
参考文献
livescience
inverse
提供元・ナゾロジー
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