万が一、身体から腕や脚、指が切り落とされてしまったら。
身体の大事な部分を一生失ってしまうかも…と怯えると思います。
しかし「切られでも、また再生するけど?」ケロッとしている生き物がいます。
それがプラナリアです。今回は彼の謎にせまります。
目次
プラナリアの基本情報
切られたプラナリアには何が起こっているのか
プラナリアの基本情報
身体を再生できる!見た目は、約2cmほどのミミズやナメクジのようなプラナリア
プラナリアは平らで単純な生き物であるため、プレーン(平ら、平原)が名前の語源になっています。
身体にある繊毛が渦上に見えることもあるため、ウズムシとも呼ばれます。
そして最も大きな生態的特徴は、身体が切られても再生するところです。
しかし、再生能力自体は動物にとって珍しいものではありません。
トカゲ、イモリは尾が再生します。しかし骨までは再生しません。
ウーパールーパーも手足であれば再生します。
人間であっても、肝臓は3分の1残っていれば再生することができます。
物騒な話ですが、お金に困って肝臓の一部を裏で売る人がいる理由でもあります。
しかしプラナリアの再生能力はそれらの動物の比ではないんです。
例えば、100個に身体が切られた場合、なんと100体のプラナリアが誕生することもあります。
それぞれの切片で、不足している体の部位が生えてくるのです。
頭に切り込みを入れれば、3つの頭を持つ「ケルベロス・プラナリア」になることだってできます。
しかも、その再生は見かけだけのものではありません。神経も臓器も、記憶さえも全て再生しているのです。
例えば、人もプラナリアもHPが100あったとしましょう。
人は、受けたダメージが1までであれば、再生できます。
プラナリアの場合、受けたダメージが99であっても、残りの1さえあれば元の100に復活できるのです。
この再生能力を使って、子孫を増やすこともできます。
大きく成長したり、水質などの環境が悪化し生命に危機を感じた場合、自分で身体を切ってクローンを増やす無性生殖にて増殖します。
プラナリアはナメクジやカタツムリのように雌雄同体ですが、必要であれば体内に精子や卵子を作ることもできます。
つまり2匹いれば交尾を行い、有性生殖によって増殖することもできるのです。
「再生」「増える」ということが超得意な生物がプラナリアといえます。
プラナリアの生息地は?どこにいるの?
プラナリアは、水辺でよほど劣悪な環境でなければ、基本的にどこでも生息可能です。
淡水(池、川など)や濃すぎない塩水(海)、湿気の多い陸などに生息しています。
またエサについては雑食ですが、動物性のタンパク質を好みます。
とくに小さな虫、水生生物、魚の卵などを好んで食します。
つまり、プラナリアが生息できる環境は多く、生きる場所もほとんど選ばないといえます。
では、プラナリアは最強なのでしょうか。
プラナリアの寿命はどのくらい?
プラナリアの寿命は「ある」とも「ない」とも言えます。
切られれば、ほぼ無限に自分のコピーを増やせることから不老不死に近いとも言えます。
しかし、そんなプラナリアも再生できない時があるんです。
例えば、目や喉付近は、切られてしまうと再生ができません。
また、食べ物が体内にあるときに切られてしまうと、消化液で自分の身体を溶かしてしまいます。
他にも
・細かく切りすぎ
・潰される
・高すぎる塩分濃度
・酸素が全くない環境
・熱湯のような高温
・過度な水質汚染
のような条件では死に至ることがあります。
最強と思われる生き物にも、やはり何処かに弱点はあるようですね。
切られたプラナリアには何が起こっているのか
なぜ切っても再生する?
ではなぜ、プラナリアは切られても再生する能力が高いのでしょうか。
それは、ほぼ全ての細胞1つ1つが、
「どの位置に、どの細胞や臓器を、どのような大きさで配置するべきか」
という番地のようなもの記憶しているためです。
そのため、身体が切られて欠損しても、残りの細胞が修復方法を知っているのです。
そういった細胞を生物学では
・分化に優れた細胞
・全能性のある細胞
・最強な幹細胞
・万能細胞
と表現することがあります。どこかで聞いたことがあるかもしれません。
つまりプラナリアを一言で表すと「万能細胞だらけの生き物」なのです。
記憶はどうなっているの?
生き物の記憶は、脳に詰まっていると考える人は多いのではないでしょうか。
しかしプラナリアの場合は脳以外の部位にも、特に細胞1つ1つに記憶が蓄積されているのでは、と考えられています。
実際に、2つに切り分けたプラナリアが、同じ記憶を持っていたことも証明されています。
1つの個体に、光のある方に食べ物があることを学習させました。
ちなみに、プラナリアは目が可愛いですが、あまり視力は良くなく、光を感じる程度です。
記憶後の固体を切り分け再生させたところ、新しく生まれた個体も光のある方向へ食べ物を求めたのです。
近年、生物の記憶は脳以外にもあるという説が根強くなっています。
例えば、人が心臓移植を受けた際、このような話があります。
食べ物の好みが、心臓提供者の好みに変わった。
知らなかったはずのことを知っていたが、提供者の知識だった等です。
生き物は日々の記憶を体全体で受け止めているのかもしれませんね。