筋肉を鍛えたいと考え、真っ先に思い浮かぶ部位は大胸筋や腕であろう。それは、人と会ったときにすごく印象に残るし、夏に太く逞しい腕と分厚い大胸筋がパンパンに張っていたら、それはカッコイイことだろう。しかし、大きな逆三角形を作る背中の筋肉には目を背けがちなトレーニング初心者や、中級者はいるのでは? 今回は、学生時代から“羽ばたく背中”を持ち、大きな上腕と誰よりも広がった背中で日本のボディビル界を席巻した“伝説”須江正尋選手の、圧倒的な背中を作るトレーニングの秘密に、“ミライモンスター”として、日本ボディビル界の若きエース・相澤隼人選手が迫る! 皆さんも、ここで紹介するトレーニング法を参考にして、デカい背中を作ろう!
取材・文:月刊ボディビルディング編集部 写真:中島康介、月刊ボディビルディング編集部
デカい背中はこうして作られる④ ラットプルダウン(サイクルハンドルバー)
狙う部位:広背筋下部
1、2パターン目に続き3パターン目のラットプルダウンは、サイクルハンドルバーを使用する。こちらのアタッチメントは、通常のサイクルハンドルバーのグリップ部分を熱で加工し、握った時に軽く逆ハの字になるようになる。それにより肩甲骨がより下がり、広背筋の下部をメインに刺激することができる。
この種目では2パターン目以上に身体を倒し、ほぼ身体が地面と平行になるくらいのポジションからスタートする。前までの種目同様、肘の曲げ伸ばしではなく、体幹から肘を遠ざけた後に体幹へ引きつけることがポイントである。上半身をかなり倒した状態で行う為ローイングの動作に近くなるが、須江選手自身その形が好ましいとのことであった。
デカい背中はこうして作られる⑤ ラットプルダウン(ワンハンドバー)
狙う部位:広背筋上部・中部
最後のラットプルダウンでは、ワンハンドバーを使用する。今までのバーとは違い左右がバラバラに動くため、前腕の回内外の動作を付け加えることが可能になる。
今まで同様、母指球で踏ん張りながら上体を倒していく。パラレルグリップで行った時と同じくらいの角度であった。ストレッチポジションでは軽く前腕を回内し、収縮ポジションにいくにつれて回外をする。最終的にはパラレルグリップくらいのポジションであるが、ストレッチの際に前腕の回内を入れることにより、ストレッチの刺激を増すことができる。須江選手自身は、バリエーションとしてこの種目を取り入れているそうだ。
ラットプルダウンの4パターンでは共通して拇指球で踏ん張る。あまり見ない踏ん張り方なので須江選手に説いてみた。須江選手曰く、「踵で踏ん張るということは身体の勢いで引くことが可能になる。ただそれは背中で引くのではなく、初動を身体の揺さぶりで引いているだけであるので拇指球で踏ん張るようにする。そうすると体制が固定されたまま動作を行うことができる」との事であった。確かに須江選手の動作を見ると、身体のブレが少なく「背中で引いているな」というのが目に見えてわかった。
デカい背中はこうして作られる⑥ スタンディング・ラットプルダウン
狙う部位:広背筋上部・中部
4パターンのラットプルダウンに引き続き、鍛錬のマシンであるスタンディングのラットプルダウンを行った。この種目は座らないため、股関節が伸展し、少しばかりかチンニングに近い形になる。足で踏ん張るということもいい意味で出来なくなるので、自然なチーティングを使うことができる。トップの位置で軽くぶら下がるように両足を浮かせ、つま先をパットに引っ掛けた後に足裏全体が地面に着き、その反動を使いバーを引いていく。テンポよく行うのがポイントである。
また、レバレッジタイプのマシンであるため、収縮ポジションでは少しばかりか、身体からバーが離れやすくなる。須江選手の動作を見ていると、バーが離れるポジションで上手くバーの下に入り込み、胸椎の伸展を行っていた。マシンの軌道に合っている動作を目前にし、これこそテクニックだと感じた。
最後の2セットほどは足を互い違いに置いていたため、何故か聞いてみたところ、「ポージングを意識していた」との事であった。トレーニングとポージングを連動させることが出来るのかという驚きばかりであった。
須江正尋(すえ・まさひろ)1967年2月27日生まれ、埼玉県出身。身長161cm体重70㎏(オン)77kg(オフ)
学生選手権で2連覇を果たしてから現在まで、その象徴的な背中で“伝説”とまで称される日本屈指のボディビルダー。
主な戦績:
1988・1989年 全日本学生ボディビル選手権優勝
1993年 選抜70㎏級優勝
2006年 日本クラス別選手権75㎏級優勝
2008・2009年 日本選手権2位
相澤隼人(あいざわ・はやと)1999年10月21日生まれ、神奈川県相模原市出身。身長164㎝、体重75㎏(オン)85㎏(オフ)
トレーニングを先にしていた双子の兄の影響から12歳でトレーニングをはじめ、非常に向上心があり、勉強熱心な性格と成長期が重なったこともあり、すさまじいスピードで成長が進行している若手No.1選手。若手と言いながらも、ボディビル歴8年というから驚きだ。2021年日本選手権優勝の快挙達成。
主な戦績:
2015~2017年 全国高校生選手権優勝
2017年 日本ジュニア選手権優勝 世界ジュニア選手権75㎏級5位
2018年 全日本学生選手権優勝
2019年 東京選手権優勝 日本クラス別選手権70㎏級4位 全日本学生選手権優勝 日本選手権9位
提供元・FITNESS LOVE
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