「嘘だ! こんな生き物いるわけない。色んな動物の体を切り貼りして作ったな! ?」

発見当初、そう疑われた生き物がいます。カモノハシです。

なぜなら見た目では何類か分からないほど、姿かたちが「あべこべ」だったから。

もふもふボディだから哺乳類?

卵を産むし、クチバシがあるから鳥類?

糞尿も交尾出産も同じ穴で行うから、爬虫類か鳥類?

毒を持つから爬虫類?

水カキがあるし、たまに陸にもあがるから両生類?

水の中にいるから魚類?

珍獣カモノハシがなぜそのようなあべこべな姿になったのか迫っていきます。

目次
カモノハシは卵を産むのに「哺乳類」なの!?
カモノハシの進化はマイペースだった

カモノハシは卵を産むのに「哺乳類」なの!?

クチバシを持つかわいい見た目から鳥類にも見えるカモノハシですが、実は「哺乳類」に分類されます。

なぜそのように結論付けられたのでしょうか?

「哺乳類で」ある根拠

哺乳類に分類される大きな理由は、孵化した子供を乳で育てるためです。

乳首はありませんが、体から出た乳が体毛を濡らし、それを子供に与えます。

「地球上で最もあべこべな動物」カモノハシの生態、魚類なの?鳥類なの?
(画像=産まれた卵 / credit: pixabay、『ナゾロジー』より引用)

また、肺呼吸など哺乳類と似た特徴が多くなっています。

糞尿も交尾出産も同じ穴(=総排出腔)で行う動物(=単孔類)という点も、古い哺乳類の特徴です。

「総排出腔」といえば、爬虫類や鳥類の特徴だと記憶している方もいるかと思います。このことで、混乱してしまう専門家もいるんです。

ちなみに、現在この単孔類はカモノハシとハリモグラしかいません。

「地球上で最もあべこべな動物」カモノハシの生態、魚類なの?鳥類なの?
(画像=ハリモグラ / credit:pixaby、『ナゾロジー』より引用)

哺乳類っぽくないところは?

理科の教科書で「哺乳類は卵を産みません」と書いてあるにも関わらず、カモノハシとハリモグラは産卵をし、記述を裏切ってくる2種です。

この2種は後ろ足の爪に毒も持っています。

犬であれば殺傷できるほど、人であれば4ヶ月ほど苦痛を与えるくらいの威力はあります。毒を持つ哺乳類は、他にトガリネズミ(唾液腺)だけです。

このことで、爬虫類っぽさまで加わってきています。

「地球上で最もあべこべな動物」カモノハシの生態、魚類なの?鳥類なの?
(画像=トガリネズミ / credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)

鳥のカモに似ていることが名前の由来にもなっていますが、カモノハシのクチバシは鳥のそれとは全く異なります。

鳥のクチバシは硬く、何かをつつく、ついばむ、刺すことが得意です。

しかし、カモノハシのクチバシはブヨブヨで柔らかくなっています。

「地球上で最もあべこべな動物」カモノハシの生態、魚類なの?鳥類なの?
(画像=カモのくちばし / credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)
「地球上で最もあべこべな動物」カモノハシの生態、魚類なの?鳥類なの?
(画像=カモノハシのクチバシ / credit:Access to Thousands of Wallpapers- Platypus Wallpapers 、『ナゾロジー』より引用)

鳥もカモノハシも、口の中には歯はありません。

カモノハシの場合は、生物などが発する弱い電気を感じる器官が発達しており、そのために歯は失われと考えられています。

電気を感じながら探し当てたエサを、少し上向きのクチバシですくって食べるんです。

カモノハシの進化はマイペースだった

カモノハシはなぜそのような「奇妙な」姿になったのか?

カモノハシは「ゴーイング・マイ・ウェイを貫いていたら、たまたま環境に合っていて、生き残ったラッキー者」だと考えられています。

「現在勝ち組として繁栄している生き物は、力が強い生き物ではなく環境に適応できた生き物」という言葉もありますが、その1つのようです。

孤島で独り勝ち!

また、他の生き物達が魚類らしく、鳥類らしく、哺乳類らしく進化していく中、カモノハシは〇〇類らしくなる道を選びませんでした。

カモノハシが生息する唯一の国「オーストラリア」は孤島であり、周りから新しい生き物が入ってきて攻められることもありません。周りに似た者もいないため、競争相手もいなかったのです。

「地球上で最もあべこべな動物」カモノハシの生態、魚類なの?鳥類なの?
(画像=オーストラリア大陸 / credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)

困っていないから大昔からほぼ姿を変えていないカモノハシですが、
しいていえば、

・歯を失ったこと

・クチバシが上向きになったこと

・体が小さくなったこと

だけは、昔のカモノハシから変わっています。よほど困ったようです。

「科学とはきれいに分類、整理する作業」とも言いますが、少数の例外は無視して認めてしまいます。その代表例が今回のカモノハシとも言えます。

筆者の周りにも、何でも食べ、何でも取り入れて一人勝ちしているような人物がいますが、こっそり「カモノハシくん」というあだ名にしようと思います。


参考文献

Bioorganic Study on the Neurotoxic Substances from Platypus (Ornithorhynchus anatinus), an Australian Unique Mammal

新・私の古生物誌(7)福田 芳生

カモノハシとハリモグラの全ゲノム解読に成功!

哺乳類の形態進化の研究を志して


提供元・ナゾロジー

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