不気味な捕食方法を進化させた蛇が発見されました。
9月11日に『Herpetozoa』に掲載された論文によると、グルカ兵が使うククリナイフの名を冠するククリィヘビは、鋭い牙でカエルの腹を引き裂き、頭を突っ込んで、生きたまま内臓を1つずつ食べていく習性があるとのこと。
しかし、どうしてククリィヘビはこのような不気味な摂食方法を進化させたのでしょうか?
ククリィヘビは内蔵だけを捕食する!?
通常爬虫類のヘビは、獲物の体全体を飲み込むようにして食べます。
そのため、一部のカエルは両生類に進化する過程で、体を巨大化させたり背中の皮膚から毒を分泌することで、ヘビによる丸呑みを回避するようになりました。
しかし小柄なシマヘビの一種である「ククリィヘビ」の調査を行っていた研究者はある日、異常な光景を目撃します。
小柄なククリィヘビが、本来なら捕食対象外である大きなヒキガエルの腹を引き裂き、頭を突っ込んで生きたまま内臓を食べていたのです。
研究者が調査を進めた結果、同じような例を複数発見。ククリィヘビにとって内蔵抜きは常套手段であることが判明します。
小柄なククリィヘビは内臓に絞って捕食を行うことで、大きさの問題と毒の問題の両方を回避していたのです。
さらにこの特殊な捕食方法の成功率が非常に高いこともわかりました。
ククリィヘビの内臓捕食にヒキガエルは激しく抵抗したものの、最終的には全てのケースで失敗し最終的には絶命しました。
なお、ヒキガエルの抵抗時間はククリィヘビが最初にどの内臓を引き抜くかによって決まったとのこと。
致命的な臓器を後回しにした場合、数時間にわたってカエルは意識を保っていました。
ククリィヘビは高度な認知機能でカエルの弱点を看破する
多くの動物と同じように、カエルも腹部の皮が薄く弱点となっています。
しかしこれまでの見識では、捕食行動にカエルの腹裂きを含むのは、カラスやアライグマなどの高度な認知機能を備えた賢い動物に限られると考えられていました。
カラスやアライグマはカエルの構造上の弱点を認識しており、毒を避けて食べやすく安全な腹部を引き裂いて、捕食を行っています。
しかし今回の研究により、ヘビもまたカエルの弱点を認識し、的確に攻撃できることが判明します。
またククリィヘビはヒキガエルが小型の場合は従来通りの丸呑みを行うことが確認されており、対象に合わせて捕食方法を変えていたこともわかりました。
捕食方法の多様さには高度な認知機能が必須です。
そのため研究者たちは、一部のヘビの認知能力が鳥類や哺乳類に匹敵する可能性があると考えています。
世界中に3000種以上存在するといわれているヘビのなかには、もしかしたら飼い主を認識できる天才種がいるかもしれませんね。
参考文献
phys
, eurekalert
, newsweek
, sciencenews
, greenreport
, Herpetozoa
提供元・ナゾロジー
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