ジムエリアに所狭しと並べられているトレーニングマシン。トレーニーならば初めて行ったジムで初めて見るマシンと出会った際にはわくわくするもので、それはまるで大人の遊園地のよう。しかし、マシンの特性を理解し、正確に使いこなしている人はどれほどいるだろうか。「どのように使えばいいのかよく分からない」「使ってみたけど負荷が抜ける感じがする」「軌道が体のサイズに合わない」などなど、ここではマシンに関する疑問の数々を鈴木選手が解決。トレーニングマシンの使いこなし術を解説していく。今回はマシンそのものの総論と胸のトレーニングにおける活用法についてだ。
取材:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩
◆第3回 マシンが力を伝達する仕組とその種類について◆
生理学では筋力の発揮は初動では弱く、終動では強くなるという特徴があります。そうした特徴に着目し、1950年代にユニバーサル社が動的可変抵抗方式を発明しました。それは滑車を使ったシステムで、初動が最も軽く、動作するにつれて負荷が増していき終動で最大になるマシンでした。
その後、アーサー・ジョーンズがスティッキングポイントでの負荷が軽く、筋力発揮が強くなるポイントでは負荷が重くなる楕円のカムを用いたノーチラスマシンを開発します。ユニバーサルやノーチラスのマシンはケーブルやチェーンを介して間接的にウエイトとレバーアームをつないでいました。そのため、ウエイトの動きとレバーの動きに微妙なズレが生じ、慣性の影響を受けやすくケーブルが一瞬緩むこともありました。
その弱点を克服するために、80年代にケン・ドムザルスキーがレバレッジシステム(テコ式)を発案します。その後、アーサー・ジョーンズの息子であるゲーリー・ジョーンズがハンマーストレングスのマシンを開発し、普及していきました。ハンマーストレングスマシン、「EVO」シリーズをはじめ進化したノーチラスマシンなどは今では多くのジムに導入されています。次にマシンの負荷を生むシステムを見ていきます。
滑車とケーブル
一般的なラットマシンなどがこれに当たります。力の方向を自由に変えられるなどの利点がありますが、「慣性」には気をつけなければいけません。ラットプルダウンで勢いをつけて引っ張ると、筋力ではなく慣性でプレートが上がってしまいます。また、回転抵抗ではないため、負荷が抜けてしまうポイントもあります。ケーブルマシンを用いたケーブルクロスオーバーは軌道も直線にしないと負荷が抜けてしまいます。
・滑車を介して力の方向を自由に変えられる。
・滑車が固定された「定滑車」と滑車自体が動く「動滑車」を組み合わせるなどして負荷の比率を変えられる。
・滑車と組み合わせてケーブルの長さを変えられる。
・滑車と組み合わせるスピードを変えたり慣性を抑えたりできる。→例:LIVE AXIS(写真右参照)
・動作によっては慣性の影響でケーブルが緩む瞬間がある。
・回転抵抗ではないため負荷が抜けるポイントがある。
レバレッジ(テコ)式
ハンマーストレングスのマシンのシステムです。テコの原理を用いて、終動で負荷をかけられるようになっています。また、レバレッジ式は軌道が一定です。自分では軌道をコントロールできないので、マシンの軌道に自分の動きを合わせていきます。
・1980 年代にケン・ドムザルスキーが発案。
・ケーブルなどを介し間接的にウエイトとアームレバーをつないでいるマシンでは摩擦抵抗が生じ、慣性の影響を受けやすいが、レバレッジ式はウエイトとアームレバーを直接つないでいるため、力点に伝えた力が直接的に作用点に伝わる。
・力点と作用点の時間差がない。(ダイレクトに重さが伝わる)
・軌道が一定である。つまり自分で軌道をコントロールできないので、マシンの軌道に自分の動きを合わせていく。
・フリーウエイトでは負荷が抜けやすい終動で負荷がかけられる。