今年3月、南アフリカのロックウッド自然保護区にて、落雷で死亡した2頭のキリンが発見されました。
その内の1頭は、直接頭に落雷を受けた痕跡が見られ、もう1頭は、近くにいたことで感電死したものと見られます。
9月8日付けで『African Journal of Ecology』に掲載された報告では、「キリンの背の高さが落雷に当たるリスクを高め、生きた避雷針(living lightning rod)に変えたのではないか」と述べられています。
果たして、キリンが避雷針になることはあり得るのでしょうか。
目次
落雷での死亡には4パターンある
キリンは「避雷針」になりうるか?
落雷での死亡には4パターンある
専門家によると、落雷が動物を死亡させるパターンは主に4つあります。
1つ目は、動物に雷が直撃するパターンで、確率としては最も低いです。2つ目は、落雷が物体に当たってはね返り、近くの動物に直撃する「サイドフラッシュ」。
3つ目は、雷が落ちて帯電した物体に触れることで起きる感電死、4つ目は、地上に落ちた雷が地面を流れて動物を感電させるというものです。
1〜3までは単体あるいは少数の動物のみ被害を受けますが、4つ目は集団死を引き起こす危険性があります。
かなり異例ですが、2016年には、密に身を寄せ合っていたトナカイの群れが、地面を通して感電し、323頭(7頭の子牛を含む)が死亡したそうです。
落雷による動物の死亡事故も、地面を通した感電死が最多となっています。
キリンは「避雷針」になりうるか?
死亡した2頭のキリンは、4歳と5歳のメスで、互いに7メートル離れた場所に横たわっていました。
片方は、頭蓋骨とオシコーン(2本の角状突起)に骨折の痕があったことから、頭上に雷が直撃したと思われます。もう片方は、目立った外傷がなく、サイドフラッシュか、地面を通した感電死が原因でしょう。
また「2頭とも強いアンモニア臭がした」と報告されており、これは落雷で死亡した動物に見られる特徴です。
一方で、キリンが他の動物よりも落雷に当たりやすいことを科学的に証明した研究はありません。
今回のケースでは、2頭とも低木の茂みや草原に囲まれていたものの、近くにキリンより背の高い樹木はありませんでした。
一般に、キリンの全高は4.3〜5.5メートルなので、確かに雷に当たる可能性は高くなります。
しかし、今回の調査だけでは、キリンが避雷針になるとは断定できません。それでも、樹木のない開けた場所でなら、キリンが最も落雷に当たるリスクが高いと言えるかもしれませんね。
参考文献
smithsonianmag
iflscience
livescience
提供元・ナゾロジー
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