古代世界の音楽が現代によみがえりました。

フランスの国際研究チームは10日、約1万7000年前のホラガイが楽器目的で作られたことを特定し、その音の再現に成功したと発表しました。

巻貝を用いた吹奏楽器としては最古のものと見られます。

研究は、2月10日付けで『Science Advances』に掲載されました。

目次
1万7000年前のホラガイはどんな音?

1万7000年前のホラガイはどんな音?

ホラガイは、1931年に、フランス・ピレネー山脈のふもとにある「マルスラ洞窟」で発見されたものです。

「ボウシュウボラ(学名:Charonia lampas)」という種の海貝で、高さ31センチ、直径18センチ、厚みは最大で0.8センチありました。

現生のホラガイより大きくて分厚く、当時の海の環境が今と違っていたことを示します。

一方で、貝を発見した考古学者たちは「加工した痕跡が見当たらず、単なる飲用カップだろう」と解釈して、詳しい調査をしませんでした。

しかし今回、研究チームが、高度な画像技術を用いて調べたところ、人の手で明らかに楽器に加工された痕跡が発見されたのです。

古代の音色が今ここに。「1万7000年前のホラガイ」の音を再現(フランス)
(画像=先端部に穴が開けられていた / Credit: advances、『ナゾロジー』より 引用)

まず、貝の先端部が取れていて、代わりに直径3.5センチの穴が見られます。

ここは貝殻の中で最も硬い部分であり、偶然に開いた穴とは考えられません。

研究主任のキャロル・フリッツ氏(トゥールーズ大学)は「穴は、別に作られた筒のようなものを挿し入れて、吹き口にしていた可能性がある」と指摘します。

また、貝の開口部の縁にも故意に削られた痕が見られました。これは音の出を調節するための加工と思われます。

古代の音色が今ここに。「1万7000年前のホラガイ」の音を再現(フランス)
(画像=穴に筒を挿し入れた / Credit: advances、『ナゾロジー』より 引用)

さらに、CTスキャンにより内部を視覚化したところ、螺旋状の仕切りに、吹き口のすぐ下の2層目まで穴が開けられていました(上図)。

これは筒を安定した場所まで挿し込むためのものでしょう。

それから、筒を固定するために使われた接着性の有機物も見つかりました。

古代の音色が今ここに。「1万7000年前のホラガイ」の音を再現(フランス)
(画像=内側に装飾を発見 / Credit: advances、『ナゾロジー』より 引用)

そして、人の手が加わった決定的な証拠として、開口部の内側に赤褐色の顔料を使った装飾が発見されました。

肉眼ではほとんど見えない状態になっていますが、指先に顔料をつけてペタペタと模様をつけたようです。

最後に研究チームは、管楽器を専門とする音楽学者と協力し、このホラガイから奏でられる音を再現しました。

それがこちらです。

【音量注意】12秒あたりから始まります。

再現できたのは「ド・ドのシャープ・レ」の3音で、それぞれに1万7000年という時間の重みが感じられます。

同チームのフィリップ・ウォルター氏(ソルボンヌ大学)は「独特の音響特性があり、強い音と深い音、そして持続的な反響を持ちます。

旧石器時代に作られた楽器のきわめて貴重な例であり、これほどのサイズのホラガイ楽器としては最古と思われる」と話しました。

人類と音楽には、かなり古い付き合いがあるのでしょう。


参考文献

Ancient Conch Shell Horn Plays Its Tune for the First Time in 18,000 Years – Hear It Here

Listen to Sound of 18,000-Year-Old Seashell Horn

元論文

First record of the sound produced by the oldest Upper Paleolithic seashell horn


提供元・ナゾロジー

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