まるでSFの世界。ウミウシ間で「記憶の移植」に成功
(画像=Credit: Wiki / ジャンボウミフラシ、『ナゾロジー』より引用)

Point

  • ウミウシの尻尾に電気ショックを与えることで「感作」がおこることを発見
  • 感作を起こしたウミウシの神経からRNAを抽出し、他のウミウシに注射したところ「感作」をおこすようになる
  • RNAが記憶の貯蔵に関わっている可能性を示唆

記憶移植は、いままではSFの世界の話でしかありませんでした。しかし、それが科学的事実になりつつあります。

14日に“eNeuro”誌に掲載された研究によると、ウミウシを使って一方から他方へ、遺伝子の一形態であるRNAを移すことで記憶を移植することに成功しました。防御反応を引き起こすように訓練されたウミウシのRNAを、訓練を受けていないウミウシに導入すると、まるで感作を受けたかのように行動したのです。これは記憶の物理的な基盤の研究に、新たな証拠をもたらす可能性があります。

RNA from Trained Aplysia Can Induce an Epigenetic Engram for Long-Term Sensitization in Untrained Aplysia

リボ核酸とも呼ばれるRNAは、巨大な分子であり、生命体の中で多くの重要な働きを持っています。例えば、タンパク質の生産に関与したり、遺伝子発現を調節したりといったことです。

研究に用いたウミウシは海棲の種で、ジャンボアメフラシ(Aplysia californica)と呼ばれています。研究者たちは学習のため、その尻尾に弱い電気ショックを与えました。電気ショックを与えられると、ウミウシは防衛的な引っ込み反射を起こし、危害から自分を守るために収縮します。続いてこのウミウシをつつくと、50秒間に渡ってこの防衛的な収縮をすることがわかりました。一方、電気ショックを与えていないウミウシは1秒ほどしかこの反応を示しません。電気ショックを受けたウミウシは、刺激に対して「感作」しているのです。

研究者たちは、電気ショックを受けたウミウシの神経系からRNAを抽出し、感作を起こしていないウミウシの血体腔に注射。すると、RNAを注射された感作していないウミウシが、まるで自分が尻尾に電気刺激を受けたことがあるかのように、40秒間に渡って防衛的な収縮を見せたのです。

研究者たちはまた、実験皿中の神経細胞でも同様の実験をしており、似たような効果を観察しています。

著者の一人である、カリフォルニ州立大学デイビッド・グランツマン教授は、この結果が「まるで記憶の移植に成功したかのようだ」と例えました。長期記憶における多くの見方では、記憶は神経の接続部であるシナプスに蓄えられていると考えられています。しかし、教授によると、「もし記憶がシナプスに蓄えられているとすると、私たちの実験が機能するはずがありません。」

今回の操作が、一生を通した経験の記憶の移植に貢献できるかはまだわかりません。しかしグランツマン教授は、「記憶の貯蔵に関する理解が増すことで、記憶の異なる側面の探求に素晴らしい機会をもたらすだろうと考えています。

via: BBC/ translated & text by SENPAI

提供元・ナゾロジー

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