方法2 中期的にはブランド力を強化する

歯止めがかからない!円安による原料高に対応する3つの方法
(画像=indigo making studio/istock,『DCSオンライン』より 引用)

 今回の円安は、構造的なもので、もはや日本でビジネスをやってゆく以上、状況が好転することはないと考えるべきだ。しかし、企業のBS(バランスシート)の現金と棚卸資産を見ると、すべて、3倍の価格で売らねば、あきらかに販管費を賄うだけの現金は不足している。つまり、店じまいすれば、運転資金を毀損する。新型コロナウイルスは、まさに、この「自転車操業」に直撃したわけだ。人が外にでなくなったからではない。だから、換金率をKPIにせざるを得ず、また、交差比率のようなKPI(重要業績評価指標)でキャッシュを増やそうとするわけだ。その考え方をあらため、ブランド維持のために、ある程度の資金をファイナンスし、値引きせず、数シーズン耐えうるようなブランド化を果たすべき現金を持つべきだと私は思う。例えば今は、憧れのメゾンブランド(どことは言わない)でさえ、タイムセールに山のように掲載されているが、本当の定番商品やブランド毀損する恐れのあるような商品はタイムセールにもアウトレットにも出てこない。

わかりやすく言えば、LOUIS VUITTONは決して(日本では)セールをやらないということなのだ。だから、みな憧れるし定価で買う。ブランド化には「辛抱」が必要なのだ。

方法3 仕入を半分にし、プロパー消化率を上げる

投入量とプロパー消化率が逆相関することは、実務をやっている人なら直ぐに分かるはずだ。簡単に言えば、売る力以上に大量に仕入れればプロパー消化率は下がるし、逆に欠品がでるぐらい仕入の量を減らせばプロパー消化率は上がる。単純な理屈である。しかし、これは縮小均衡の戦略である。ブランド別の会計では収益率は上がるものの、会社全体で言えば、固定費をまかなうだけの売上がなくなり、リストラを繰り返すことになる。今のアパレルはこの状態になっている。

こうしたとき、よくある間違いは、衣料品の新ブランドを立ち上げることだ。消費者から見れば、目新しいブランドに一定の消費が発生するが、そもそも作っている会社が同じなのだから、数シーズンもすればリストラ前の状況に戻ってしまうわけだ。こうした、縮小均衡施策を避ける方法は、経営学的にいえば、「商材を変える」か「販売エリアを変える」かのいずれかしかない。つまり、衣料品以外のビジネスをやるか、日本以外の市場にでてゆくことである。これは、論理的にそうなのだ。

さて、原価が上がれば、売価を上げる、というのは、原価率が常に一定であることが前提である発想だ。私は、その「率」を変える案を提言したい。よく考えてもらいたい。世の中は服で溢れてかえっている。また、圧倒的な競争優位を持つアパレルは限られている。ならば、ここでマーチャンダイジングモデルを根本的に変え、「率」を変化させることで、コスト高を吸収するというのが、私の提案だ。一つの考え方として参考にしていただきたい。

提供元・DCSオンライン

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