2011年に、火星の南極近くで発見され、「笑顔のようだ」と話題になったスマイル・クレーター。
その笑顔がここ10年の間で、よりにこやかになっていることが判明しました。
調査を行ったSETI研究所のロス・バイヤー氏は「熱浸食により氷が溶けたことで地面が露出し、笑顔が大きくなっているように見える」と話します。
氷が溶けて満面の笑みに
スマイルクレーターは、2011年10月、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」によって初確認されました。
撮影には、MROに搭載した高性能カメラ・HiRISEが用いられ、火星の軌道上からその「笑顔」をとらえています。
顔の輪郭線や各パーツに見える部分は、露出した暗褐色の地形で、あとの白い部分はそれを覆う「南極冠」です。
極冠とは、地球の極地が氷河で覆われているように、惑星や衛星の氷に覆われた高緯度地域を指します。
2011年の初撮影時では、まだ笑顔が小さく、地表に露出している陸地も広くありませんでした。
ところが、2020年12月13日に撮影された新たな画像を見ると、陸地の露出部分が多くなり、笑顔がにこやかになったように見えます。
口元もより口角が上がり、2つの小さな点だった鼻は1つに繋がっています。
研究員のバイヤー氏は「太陽熱による浸食により、固体状の氷が直接気体に昇華したことで、地表の露出が大きくなった」と説明します。
また、バイヤー氏は「スマイルクレーターの観察は単なる気晴らしではない」と話します。
「火星の1年を通して、極冠の変化を測定することで、年間の平均的な氷の堆積量と消失量とを知るのに役立つ」とのことです。
火星にはこの他にも、スマイル顔のクレーターが存在します。
南半球のアルギル平原の東端に見られる直径230キロほどの「ガレ・クレーター」です。
ガレ・クレーターは、1976年にNASAの火星探査機「バイキング1号」によって発見され、上の画像は1999年3月に、同じくNASAの「マーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)」によって撮影されました。
その柔和な笑顔から「ハッピー・フェイス・クレーター」とも呼ばれています。
こうした自然物が人の顔や動物に見える心理現象は「パレイドリア」といい、天体観測ではよくあることです。
地上から見た月のクレーターがウサギに見えるのもその一例。
火星には、まだまだ表情豊かなクレーターがありそうです。
参考文献
Why The ‘Happy Face Crater’ on Mars Is Happier Than Ever
提供元・ナゾロジー
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