アダム・スミスの安全保障論
これらの歴史的事実は、「平和外交」が決して万能ではないことを証明している。18世紀英国の偉大な経済学者アダム・スミス(1723年~1790年)も、「政治権力の第一の義務は、他国の侵略から社会を守ることであり、この義務は軍事力によってのみ遂行される」(アダム・スミス著「国富論」下巻世界の大思想15巻水田洋訳149頁。昭和44年河出書房新社)と述べ、軍事力の重要性を認めている。
アダム・スミスのいう「軍事力」とは、現代の国際社会でいう「抑止力」であり、その本質は「反撃能力」である。上記の侵略を受けた諸国は、いずれも、その当時侵略を抑止するに足りる「抑止力(反撃能力)」を保有していなかったために侵略を誘発したことは明白である(2022年3月15日「ウクライナ侵略の教訓:抑止力なき国は侵略される」参照)。
ところが、「抑止力(反撃能力)」を認めず、ひたすら憲法9条の「平和外交」を絶対視する共産・社民の主張によれば、上記の侵略を受けた国、すなわち、ポーランドも、韓国も、チベットも、アフガニスタンも、クウェートも、ウクライナも、すべて、侵略を抑止するに足りる「抑止力(反撃能力)」を保有していなかったためではなく、積極的な平和外交をしなかったために侵略を受けたことになり、侵略はこれらの国の自己責任になりかねず、きわめて不当な結論になる。
「平和外交」だけでは侵略を抑止できないことは明白である。これは世界の歴史が証明している事実だからである。
中国も北朝鮮も喜ぶ共産・社民の「防衛力強化反対」
以上に述べた通り、他国からの侵略を抑止するためには、侵略を抑止するに足りる「抑止力(反撃能力)」の保有が必要不可欠であることが明白である。しかし、共産・社民はひたすら憲法9条に基づく「平和外交」を主張し、軍事対軍事の悪循環になると称して、防衛力の強化を認めず、「抑止力(反撃能力)」の向上にも強く反対している。
このような、「防衛力強化」「抑止力強化」に強く反対する共産・社民の安全保障政策を喜ぶのが中国や北朝鮮、ロシアであることだけは確実である。なぜなら、共産・社民の「防衛力強化反対」のおかげで、日本の中国、北朝鮮、ロシアに対する「抑止力(反撃能力)」が脆弱になり、日本を侵略しても強力に反撃される恐れが少なくなり、「尖閣」「沖縄」を含めそれだけ侵略が容易となるからである。
文・加藤 成一/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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