SF作品の定番といえる技術の1つに、「コールドスリープ(長期冷凍睡眠)」があります。

宇宙旅行はお隣の火星へ行くだけでも、半年近くかかります。人類が広い宇宙を旅することになったとき、冷凍睡眠は必須の技術だと考えられています。

しかし、これは現在、どの程度実現に近づいているのでしょうか?

カナダ、カールトン大学の研究では、その可能性は人間に近い霊長類の遺伝子に隠されていると報告しています。

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「コールドスリープ(長期冷凍睡眠)」の必要性

「コールドスリープ(長期冷凍睡眠)」の必要性

宇宙旅行のための「コールドスリープ」実現に、冬眠中のキツネザルが鍵になるかも
(画像=SFの定番、コールドスリープ。宇宙旅行には必須になると考えられる。 / Credit:Could Humans Hibernate for Space Travel? | WIRED,『ナゾロジー』より 引用)

宇宙は生物にとって過酷な環境です。酸素も重力もなく、危険な放射線(宇宙線)が飛び交っています。

宇宙空間に長く人間を置いた場合、非常に危険なことになるのは容易に想像がつく問題です。

無重力環境に長く滞在した場合、筋肉や骨密度の低下が起こることは、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士の協力によって判明しています。

しかし、より深刻な健康問題、免疫系の変化や視力の変化、宇宙線の影響などは、いまだはっきりとはしておらず、その対処方法も不明なままです。

人類は今後、月面の基地建設や、火星への有人探査任務なども計画していますが、派遣される人間の健康問題や、物資、食料の確保の問題、極端な環境に長期間人間を隔離するという精神的な問題の解決策は、確立されていません。

そこで注目されているのが、人間の体を一時停止させ仮死状態にする「コールドスリープ(長期冷凍睡眠)」です。

身体の代謝活動を大幅に遅くする(または完全に停止させる)この技術があれば、移動や滞在時間の長期化問題、健康上の懸念、宇宙船のサイズ問題、供給の割り当て問題、など宇宙探査に関わる多くの問題を軽減することができるのです。

そのため、人間の体を安全に冬眠状態へ導き、適切な時期に体を損傷させることなく戻す方法が、アメリカ国防総省やその他の宇宙機関で積極的に研究されています。

この研究でヒントになるのが仮死状態で冬を越す、いわゆる冬眠を行う動物たちです。

彼らは冬眠によって、筋肉などの著しい消耗などは起こしません。彼らはどうやって、生命に必要なプロセスを自由にオン・オフしているのでしょうか?