地球上で最も暑い場所として有名なイラン東部の「ルート砂漠」で、甲殻類の新種が発見されました。
8月5日付けで『Zoology in the Middle East』に掲載された報告によると、この生物は、これまでにわずか4種しか知られていない「Phallocryptus属」に分類される淡水生物とのこと。
しかし、雨もほとんど降らないルート砂漠で、どのように生き延びているのでしょうか。
研究は、シュツットガルト州立自然史博物館(独)、テヘラン大学(イラン)により報告されています。
乾燥状態で数十年も生きられる
新種生物が見つかったのは2017年のこと。研究チームが、ルート砂漠の生態調査をしていた際、砂漠南部に位置する季節性の小さな湖で発見されました。
新たに学名が「Phallocryptus fahimii」と命名されましたが、これは発見者の一人であり、2018年の飛行機事故で亡くなったイランの生物学者ハディ・ヒミ(Hadi Fahimi)氏から取られています。
研究チームのホセイン・ラジャエイ博士は「こうした過酷な環境下での生態調査では、特に水場に注意して生物を探します。しかし、暑く乾燥したルート砂漠で甲殻類が見つかったことは本当にセンセーショナルでした」と話します。
調査の結果、この生物は、干上がった土壌の中で何十年も生き延びることができ、水場が回復する雨季に孵化していることが分かりました。
過去にもオーストラリアで砂漠環境適応した類似の甲殻類が見つかっていますが、世界一過酷なルート砂漠に適応した点で、非常に特異であるようです。
ルート砂漠の最高気温は80℃超え!?
スイスよりも広い面積を持つルート砂漠は、現時点で、過去最高の地表温度を記録しています。
NASAによる2006年の衛星測定で、地表温度70.7℃が報告されましたが、最近になって80.3℃に塗り替えられました。
異常な高温の原因は、ルート砂漠に広く見られる黒い玄武岩です。これが熱を吸収し、地表温度を高めています。
夏場の平均気温は50.4℃に達し、年間降水量が30mmを超えることはありません。
雨が降ると一時的な水源ができるものの、雨季が終わればまたすぐに枯渇します。水生生物が恒久的に生きられる環境も存在しません。
そのため、この新種生物が過酷なルート砂漠に適応できた秘密を調査する必要があります。
どうやらこの生物は、「お熱いのがお好き」なようですね。
【編集注 2021.07.08 16:40】
タイトルを一部修正して再送しております。
参考文献
scitechdaily
提供元・ナゾロジー
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