なにかの映画の背景かな? と思ってしまいそうな光のリボン。

まるでCGで描いたように見えますが、これは歴としたハッブル宇宙望遠鏡による現実の宇宙の撮影画像です。

作り物に間違えそうな不思議な光景は、一体何を映しているのでしょうか?

目次
超新星の残骸 はくちょう座ループ
現在も広がり続ける衝撃波
幻想に満ちた宇宙

超新星の残骸 はくちょう座ループ

まるでCG画像のような「宇宙に浮かぶ光のリボン」をハッブル宇宙望遠鏡が撮影
(画像=はくちょう座ループ。/Credit:ESA & Digitized Sky Survey (Caltech)、『ナゾロジー』より 引用)

不思議な光のリボンの正体は、地球から約2600光年離れた超新星の残骸です。

ここにあった星は太陽の20倍程度の質量を持っていて、今から約1万年以上前に超新星爆発を起こしたと考えられています。

超新星の爆発は星の破片を広く宇宙へ吹き飛ばすとのこと。高熱の衝撃波は、爆発から1万年以上過ぎてもX線で輝き続け、その残骸は地球からも観測できるのです。

はくちょう座超新星爆発の衝撃波は、現在60光年に渡る範囲に広がっていて、まるで輪のように観測できるため、はくちょう座ループ(英 :Cygnus Loop)と呼ばれています。

まるでCG画像のような「宇宙に浮かぶ光のリボン」をハッブル宇宙望遠鏡が撮影
(画像=白い十字線の交点が撮影ポイント。赤い十字線がはくちょう座。/Credit:WorldWide Telescope、『ナゾロジー』より 引用)

今回撮影された画像は、このはくちょう座ループの一部を、拡大して撮影したものなのです。

現在も広がり続ける衝撃波

まるでCG画像のような「宇宙に浮かぶ光のリボン」をハッブル宇宙望遠鏡が撮影
(画像=はくちょう座ループの残骸の一部。/Credit:J.J. Hester (Arizona State University), and NASA、『ナゾロジー』より 引用)

はくちょう座超新星爆発の残骸の外縁部分は、毎秒約350kmというとてつもない速度で現在も膨張を続けています。

衝撃波で吹き飛ばされた低密度の星間物質と、星の爆発で放出された物質が相互作用して、このベールのような不思議な構造が形成されています。

地球から見たはくちょう座ループの視直径は、満月の6倍ほどです。その中心には星の破片の痕跡が見つかっています。

まるでCG画像のような「宇宙に浮かぶ光のリボン」をハッブル宇宙望遠鏡が撮影
(画像=欧州のROSAT衛星によるはくちょう座ループのX線写真(左)。X線天文衛星「すざく」による星の破片の分布画像(右)。/Credit:JAXA、『ナゾロジー』より 引用)

はくちょう座ループは非対称な形状をしているため、超新星爆発の爆風は周囲へ等方的には広がらないという事実を示しています。