空前のフリーランスブームのなか、真剣に脱サラを検討し始める人が増えているようです。一方、イメージがわかないまま脱サラしてしまい、後悔する人も多々います。
今回は実際に脱サラ後フリーランスとして約3年間働き、その後法人化した筆者が、同じく脱サラ経験者である周囲のフリーランスの話をまとめ、脱サラ前に見てほしいチェックリストを作りました。フリーランスになりたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
脱サラしてフリーランスになり後悔したこと10選
脱サラ前に見てほしい、フリーランス適正チェックリスト
脱サラしてフリーランスになり後悔したこと10選
脱サラしてフリーランスになり、自由に生きる。一見この目標は魅力的に見えますし、昨今は脱サラの成功談やノウハウにスポットが当たりがちです。
しかし、実際に脱サラしてフリーランスとして生きることは、必ずしも全ての人にとって「正解」ではありません。そこには働き方、生き方の相性のようなものもあるのです。
本記事では、脱サラ後フリーランスになった個人事業主や経営者数名に、会社員時代と比較してどんな苦労があったのかヒアリングしました。そのなかから、特に多く聞いた内容を10個紹介します。
1. 休みづらい、精神的負荷が大きい
フリーランスはいつでも休める反面、休みづらいです。気を抜くと仕事がなくなるかも……という不安を抱えながら働いているので、会社員時代には経験しなかったプレッシャーを感じます。
フリーランスの同業者からも、「オンオフが切り替えられなくて働き続けてしまう」「ときどき何もかもから逃げ出したくなる」などの本音を聞きました。
組織や勤務時間に縛られないからといって、悠々自適な生活が送れるわけではないのです。
2. 確定申告や事業計画などの業務にストレスを感じる
会社から離れ、フリーランスや個人事業主として働くことになると、確定申告や決算をはじめ、月々の経費計算、年間事業計画、案件管理、契約書管理など、仕事以外にもさまざまな業務が発生します。
たとえライティングやデザイン、マーケティングなどの専門領域で実績があったとしても、そのほかの関連業務に対して強い苦手意識があると、ストレスを感じることが多くなります。
脱サラすると、会社員時代は他部署のメンバーの仕事に支えられて自分の仕事ができていたんだな、と改めて感謝の気持ちがこみ上げます。
3. 経済的に不安定、貯金が足りない
固定給をもらえない不安は、脱サラして初めて痛感するものです。
家賃や通信費などの固定支出があるにも関わらず、収入が不安定だと、貯金を思ったように貯められません。予想外の出費の打撃も受けやすいですし、ケガや病気によって稼働が少なくなるとキャッシュフローが回らなくなる危険もあります。
フリーランスの「たくさん稼げる」はごくわずかな成功例で、かつ「そのあと収入がゼロになる」リスクが消えるわけではありません。
4. 周囲から理解されづらい
筆者のフリーランス仲間は、「在宅ワークだと家族から無職だと勘違いされる」と嘆いていました。
フリーランスの場合、職種によっては何をしているのかわかりづらく、会社勤務ではないことを軽んじられることもあります。フリーランスとフリーターの違いすら、一般には意外と知られていないものです。
努力して実績を重ねてもそれが周囲に伝わらないことで、心が重くなる人もいます。
5. ローン契約や結婚などが困難に
ここまでの話ともつながりますが、フリーランスになると社会的信用や経済的安定性が下がります。
その結果、ローン契約やクレジットカード発行など「安定した支払いの見込み」を求められるものは審査が通りづらくなることも。
また、あるフリーランスの方は、脱サラがきっかけで結婚を考えていた交際相手と揉めて、最終的には別れてしまったと話していました。信用の尺度は経済力だけではありませんが、実際フリーランスになると「大丈夫」と太鼓判が押せないのも事実です。
家や車の購入を考えている人や、大切なパートナーがすでにいる人は、脱サラの選択について慎重に検討し、相談したほうがよさそうです。
6. 世間や周囲と常識感覚がずれる
活動の時間帯や勤務地、組織のしがらみなどに縛られなくなると、自分の興味に偏った情報を取ったり、趣味の時間が増えたりしがちです。それは一見幸せなことですが、世間一般の常識からは徐々に離れていきます。
思いもよらないところで常識はずれなことを言ってしまったり、狭い価値観で物事を捉えてしまったりすることにもつながるので、注意が必要です。
7. チームで働くことが激減する
「会社はチームだったのだ」と、脱サラしてからしみじみ感じることが増えました。
フリーランスは基本的に一人で仕事を受け持つことが多く、たとえ取引先のチームの一員になっても、あくまで外部パートナーという立ち位置です。チームプレイが好きな人には、やや寂しく感じるところでしょう。
あるフリーランスの方は、フリーランス同士で小規模なチームを作り、会社のような擬似的な枠組みを作ったと言います。周囲の同業者との深い信頼関係があれば、そういった形の解決策もあるかもしれません。
8. コミュニケーション力が意外と求められる
人付き合いが苦手だから会社を辞めたという人は、周囲を見ていると大概うまくいきません。
というのも、フリーランスは営業から案件の交渉、その後のフォローアップまで、取引先と話す機会が極めて多く、そこで培われた信頼関係が実績に大きく関わってくるからです。たとえスキルに自信があっても、コミュニケーションに難があると次の仕事が来ません。
フリーランスは会社の看板を通さず、自分が直接その評価にさらされるので、残酷なほどにコミュニケーション力の不足を感じる機会が多いです。雑談力の有無というより、相手の意志を正しく受け取ることや、論理的に解決策を提案することが苦手な人は、ここでつまづいてしまうことが多いようです。
9. 老後などの中長期的な計画が立てづらい
働き盛りでフリーランスになるとあまりイメージできないかもしれませんが、年を重ねるにつれて働く体力や思考力は低下してきます。
知人の40代後半のフリーランスの方は、若手の同業者のほうが技術力もスピードもあるので、長く付き合いのある取引先との関係が命綱だと教えてくれました。また、その方は今後の生計を立てるために地方でのゲストハウス経営などの副次的な事業も検討し、準備しているそうです。
いつまで現役で働くのか、老後はどう生計を立てるのか。こうした中長期的な部分の不透明さは、それぞれが自分で考えて解決していくしかありません。
10. 自分には合っていなかった
ここまで書いてきた数々の理由によって「自分にはフリーランスが合っていなかった」と自覚することが、脱サラしたフリーランスの一番の後悔ポイントとして挙げられます。
なかには、フリーランスが合っていないからといって会社員に戻ることもできず、かと言って事業が波に乗ることもなく、不安を抱えながら働き続けている人も少なくありません。
インターネット上には、脱サラの成功談が数多く載っていますが、脱サラ=誰もが必ず幸せになれる方法というわけではありません。人には向き不向きがありますし、場合によっては、大きな後悔を抱えながら生きていくことにもなりかねないのです。
脱サラ前に見てほしい、フリーランス適正チェックリスト
こうした脱サラ後フリーランスになった人たちの後悔ポイントをもとに、いまフリーランスになろうと検討している人に向けたチェックリストを作ってみました。
各項目に対して「はい・いいえ」のいずれかで答え、「はい」の数をチェックしてみてください。
■マインド・性格
- 主体的に物事を考えて解決しようとする。
- 責任感やプレッシャーを楽しめる。
- 周囲の目や社会的評価はあまり気にならない。
- 連続する変化や長期的な不安定さは気にならない。
- 一人でも集中して仕事ができる。
■ベーシックスキル
- お金の計算や、それに紐づく長期的な目標設定が得意だ。
- 相手の意見や悩みを正確に読み取るのが得意だ。
- 期日設定やスケジュール管理、タスクの優先順位付けが得意だ。
- 事務的な手続きや書式に則った書類作成が苦ではない。
- 相手との交渉を論理的に進め、適切な答えを導き出すのが得意だ。
■周囲の環境
- 家族やパートナーが働き方に対して柔軟な考えをもっている。
- 仕事の関係以外でいざというときに頼れる友人や知人がいる。
- 高いコストをかけず維持できる生活スタイルや居住環境がある。
- 家や車の購入など大きな出費の予定は今後ない。あるいは既に出費の準備が済んでいる。
- 会社に対して一切心残りはない。
上記の項目に対する「はい」の数
- 16~20個:
フリーランスに適性が高い方です。思いきって挑戦してみましょう! - 11~15個:
脱サラ後苦労するかもしれませんが、きっと後悔はしないはずです。 - 6~10個:
マインドセットや環境面でもう少し時間をとってフリーランスになる準備をしてみましょう。 - 0~5個:
フリーランスになると後悔する可能性が高いので、会社員としてキャリアを再検討するのが良いかもしれません。