最近は、ワイヤレスの小型機器が増えてきましたが、こうした機器で気になるのがバッテリーの問題です。
2月10日にオープンアクセスジャーナル『Science Advances』で発表された新しい研究は、体温を利用した身につける熱電発電機を開発したと報告しています。
これは伸縮性があり、指輪やブレスレットという形で着用し、時計やフィットネストラッカーなどの電子機器を半永久的に稼働できるといいます。
人間の体がバッテリーになる
人体の有機エネルギーを使って発電する、と言われると映画マトリックスを思い出す人も多いかもしれません。
そうしたSFネタに比べるとだいぶ小規模なものですが、今回の研究では人間の皮膚1cm²あたりから、約1Vのエネルギーを生成できるデバイスを開発したのだといいます。
これは既存のほとんどのバッテリーが提供する電圧よりも低いものですが、時計やフィットネストラッカーなどの電子機器に電力を供給するためには、十分な量です。
こうした機器では、使い切りのバッテリーや電池で駆動する場合が多く、最終的には電気を使い果たして交換する必要が出てきます。
しかし、新しい熱電デバイスのいいところは、身につけて一定の電力を供給し続けることができる点です。
またこの伸縮性素材のデバイスは、損傷しても回復が容易で完全にリサイクルが可能なため、従来のバッテリーよりクリーンな代替品になります。
このデバイスはポリイミンというと呼ばれる伸縮性のある素材をベースにしています。
研究では、このベース素材に薄い熱電チップを貼り付けて、最終的にブレスレットや指輪のようなアクセサリーのように加工しました。
「通常私たちの体温は、運動などをすると周囲の冷えた空気中へ放射されます。しかし、このデバイスはそうしたエネルギーの循環を無駄にせずに回収し、利用しているのです」
今回の研究チームの1人、コロラド大学ボルダー校の助教授シャオ・ジェンリャン氏はそのように説明しています。
またこのデバイスは、発電ユニットを追加していくことで、簡単に電力を高めることができるといいます。
デバイスを構成するイミン結合と呼ばれる部分は、まるでレゴブロックのように組み合わせていくことで大きな構造を作ることができるのです。
このため、ジョギングや散歩などで活発に動いている人は、一般的なスポーツリストバンドサイズのこのデバイスを使用することで、約5Vの電気を生成することが可能だと研究者は計算しています。
ポリイミンのベース部分は、電子部品を剥がして溶解液に浸すことで、すべて再利用することが可能で環境への影響もかなり少ないようです。
デザインにはまだ問題がある、と研究者たちは認めていますが、彼らは今後5年から10年で市場に供給できる可能性があると考えています。
身につけているだけで充電の必要がなくなるデバイスが、世の中に登場する日は近いのかもしれません。
参考文献
New wearable device turns the body into a battery
元論文
High-performance wearable thermoelectric generator with self-healing, recycling, and Lego-like reconfiguring capabilities
提供元・ナゾロジー
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