国民全員に加入が義務付けられている、公的健康保険制度。被保険者に交付される保険証は、加入先によって異なる。保険証の種類によって受けられる保障が異なる場合もあるため、自分の保険証の種類を把握しておくことが大切だ。

保険証は大きく4種類に分けられる

健康保険は、職業や勤務先の規模などによって加入先が異なる。また、加入先がどこかによって、保険証の種類が決まる。

自営業や無職の人などが加入する国民健康保険(国保)

国民健康保険は「国保」や「地域保険」と呼ばれることもある。自営業者や農業・漁業従事者、パート・アルバイトのうち勤務先で健康保険に加入していない人、無職者などが加入する。保険者は市区町村や国保組合で、加入や脱退などの手続きは市区町村の窓口で行う。

中小企業などに勤務する人などが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)

全国健康保険協会が運営する健康保険には、中小企業などに勤務する従業員やその家族が加入する。これは、いわゆる「社会保険(社保)」に分類されるもので、「被用者保険」と呼ばれることもある。

また、同協会は「船員保険」も運営しており、船員もこちらに加入することになる。

主に大企業に勤務する人などが加入する組合管掌健康保険(組合健保)

組合管掌健康保険には、一定規模以上の社員がいる企業に勤務する従業員やその家族が加入する。この種の健康保険は、企業が設立した健康保険組合によって運営されており、こちらも全国健康保険協会が運営する健康保険と同様、「社会保険」に分類される。

公務員や教職員などが加入する共済組合

健康保険には共済組合によって運営されているものもあり、公務員や教職員とその家族などが加入する。そしてこの健康保険も、「社会保険」に分類される。

保険証の種類に関係なく共通して受けられる3つの保障とは

健康保険は保険者(加入先・運営者)によっていくつかの種類に分けられるが、以下の保障については保険証の種類に関係なく共通している。

医療費の自己負担割合は年齢などによって違う

医療機関で支払う医療費の自己負担割合は、保険証の種類に関係なく以下のようになっている。

義務教育就学前……2割負担
6歳以上70歳未満……3割負担
70歳以上75歳未満……2割負担(現役並み所得者は3割負担)
75歳以上……1割負担(現役並み所得者は3割負担)

1ヵ月あたりの自己負担限度額を超える分が償還される高額療養費制度

医療費が高額になった場合、高額療養費制度が適用される。年齢や収入に応じて算出される1ヵ月あたりの自己負担限度額を超える部分について、保険者から償還を受けられる。個々に適用される自己負担限度額は、保険証の種類が異なっても変わらない。健康保険に加入しているすべての人が、この制度を利用することができる。

一律42万円が支給される出産育児一時金

被保険者またはその被扶養者が出産した場合、「出産育児一時金制度」により一定の金額が支給される。これも保険証の種類に関係なく共通して受けられる保障で、健康保険の加入先によって支給額が変わることはない。

保険証の種類によって受けられる保障はどう違う?

保険証の種類は、職業や勤務先の規模などによって加入先が決まる「社会保険(被用者保険)」と、自営業者などが加入する「国民健康保険」とに大別される。加入しているのが社会保険(社保)なのか国民健康保険(国保)なのかによって、受けられる保障などに以下のような違いがある。

保険料の負担割合―——社保は1/2、国保は全額負担

社会保険の保険料は、事業所がその半額を負担する。そのため被保険者は、保険料の1/2相当額を給与より差し引かれることになる。これに対して国民健康保険の保険料は、被保険者が全額を負担しなければならない。

休業した場合の保障————社保は傷病手当金が支給される

社会保険の被保険者が病気やケガなどによって仕事を休んだ場合、傷病手当金が支給される。これは被用者を保護するために設けられた制度で、休業より3日間の待機期間経過後、最長1年6ヵ月間にわたり標準報酬月額の約2/3相当額が支払われる。また保険者(加入先)によっては、附加給付制度が用意されているところもある。

これに対して国民健康保険には、傷病手当金制度が存在しない。そのため病気やケガにより仕事を休んだとしても、健康保険から何らかの手当金が支給されることはない。

扶養家族の扱い————社保は扶養家族にも保険証が交付される

社会保険には「扶養家族」という概念があり、配偶者や子供を扶養に入れている場合、追加の保険料を支払うことなく家族にも保険証が交付される。社会保険は収入をもとに保険料が算出されるため、子供が生まれ家族が増えたとしても、それによって保険料が上がることはない。

これに対して国民健康保険には扶養家族という概念がなく、被保険者ごとに保険料が算出される。そのため家族が増えた場合は、支払う保険料が増えてしまう。

保険証の種類と受けられる保障を正確に把握しよう

保険証は、その種類によって受けられる保障に違いが出る場合がある。どのような場合にどのような保障を受けられるか把握しておくことは、損害保険や生命保険の保障内容を決めるうえでも非常に大切だ。

これまで健康保険について詳しく知る機会がなかった人は、これを機に自分が持っている保険証がどのような種類に分類されるのか、確認してみてはどうだろうか。

文・曽我部三代(保険業界に強いファイナンシャルプランナー)
 

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