昨年ブラックホールの撮影画像が公開され、世界に驚きをもたらしたイベント・ホラインズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope、以下EHT)ですが、このときの研究成果を活かして過去の観測データも改めて分析が行われました。
その結果、ブラックホールの影は一定ではなく、ぐらぐらと揺らぐように時間変化していることがわかったのです。
この結果は未公開だった観測データを含め、9月23日の『The AstrophysicalJournal』に掲載されています。
ブラックホールにはまだ我々の知らない未知の性質が秘められているようです。
目次
EHTとブラックホールの長期観測データ
揺らぐブラックホールの影
EHTとブラックホールの長期観測データ
ブラックホールの初めてとなる撮影画像が2019年に公開されましたが、これは2017年に行われた1週間分の観測データをまとめて作成されています。
しかし過去の記事でもお伝えしたように、EHTによるブラックホールの観測はもっと以前から行われていていました。
EHTは単独の望遠鏡のような呼ばれ方ではありますが、実際は世界中の望遠鏡のネットワークの総称で、大量の観測データからブラックホールの姿を明らかにするプロジェクトを指す名前でもあります。
参加する天文台は年々増えていて、その観測の精度もあがっています。
こうした参加天文台の拡大によって、昨年にはブラックホールの姿を画像として再現することに成功したのです。
今回の研究では、2019年に発表した研究成果を使って、2009年から2013年に集められた観測データを改めて分析しました。
このときの観測は、2017年の使われたものよりはるかにデータ数が少ないため、画像作成は不可能ですが、ブラックホールのいくつかの特徴を明らかにすることができました。
そこから確認されたのは、これまで知られていなかったブラックホールの時間変化だったのです。
揺らぐブラックホールの影
ブラックホールの直径は最新の観測データとの違いはありませんでした。しかし、データからモデリングされたブラックホールは暗い影になっている場所の位置が、時間によって変化していることがわかったのです。
ブラックホールは、それ自体の姿を見ることはできません。観測で映っているのはブラックホールの周囲に吸い寄せられた塵やガスが作る降着円盤です。
この円盤の動的な変化を調べたところ、円盤はぐらつくことがあるとわかったのです。これは科学者にとっても大きなニュースでした。
ブラックホールはその存在が確認されて、観測がされるようになってからまだ日の浅い天体です。
この2009年から2013年の観測は、最新のものに比べればデータ量としては劣るものですが、長期観測によって、これまでになかったブラックホールの時間的な変化を明らかにする貴重なものだったのです。