ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河の画像に、これまで見つかったことのない新しい現象が発見されました。

10月8日に科学雑誌『The Astrophysical Journal Letters』に発表された研究は、活動銀河の中心、巨大ブラックホールから伸びる闇の光線について分析していて、それが地球でも見られる気象現象と同一である可能性を報告しています。

その気象現象とは、地球では「天使のはしご」として知られている夕暮れ頃に雲が光をさえぎる美しい光景のことです。

目次
ツイッター投稿から始まった研究
地球に見られる薄明光線と同じ現象?

ツイッター投稿から始まった研究

ブラックホールから伸びる謎の暗い光線が発見される!正体は「天使のはしご」?
(画像=ハッブル宇宙望遠鏡の撮影した活動銀河「IC 5063」。よく見ると中心からX型に暗い筋が伸びている。 / Credit:NASA, ESA, STScI and W.P. Maksym (CfA)、『ナゾロジー』より引用)

この画像は地球から約1億5600万光年離れた活動銀河(セイファート銀河)「IC 5063」の姿を、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したものです。

よく見ると、銀河の中心部分から暗い筋がXの形に伸びているのがわかります。

この不思議な闇の光線を最初に発見したのはアマチュア天文学者のジュディ・シュミット氏。

活動銀河核に興味を持っていたシュミット氏は、公開されているハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブから、「IC 5063」の観測画像を選んで露出の画像処理を行っていました。すると強調された画像の中に、この暗い筋が現れたのです。

何を見ているのかわからなかった彼女は、すぐにその再処理した画像をツイッターに投稿しました。

するとハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者ピーター・マクシム氏を始めとした複数の天文学者たちがすぐに興味を示したのです。これを発端に結成されたのが今回の研究チームでした。

地球に見られる薄明光線と同じ現象?

この発見を、研究チームは地球に見られるある気象現象と同一のものではないかと考えています。

それが薄明光線です。これはロマンチックな呼び方では「天使のはしご」とも表現される日の出や夕暮れの空に見られる美しい影の光の光線パターンです。

ブラックホールから伸びる謎の暗い光線が発見される!正体は「天使のはしご」?
(画像=薄明光線の参考画像。誰もが一度は目にした記憶があるだろう。 / Credit:Z. Levay,hubblesite、『ナゾロジー』より引用)

活動銀河の中心には超巨大質量ブラックホールが存在しています。ブラックホール自身が光ることはありませんが、その周囲に集められ落下する加熱したガスは、明るい光を放っています。

この光がブラックホールを取り巻く塵の円盤を透過したとき、塵の密集した場所にあたった光が影となって、地球の空に見られる薄明光線と同じような状態を作っているのではないかというのです。

ただ、そのサイズは地球のものとは桁違いです。「IC 5063」から差す闇の光線は非常に大規模なもので、少なくとも3万6千光年に渡って伸びています。