初期の宇宙に天の川銀河にそっくりな銀河が見つかる
(画像=発見された銀河。重力レンズ効果により光の輪に見える。/Credit:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), Rizzo et al.、『ナゾロジー』より引用)

point

  • 124億光年離れた初期宇宙で、天の川銀河によく似た銀河が発見された
  • 5月にも初期宇宙で回転銀河が発見されたが、今回は重力レンズを利用し詳細に観測された
  • 初期宇宙に秩序だった回転銀河が存在することは、銀河形成の理論に大きな影響を与える

ヨーロッパ南天天文台(ESO)のALMA望遠鏡が、私たちの天の川銀河によく似た銀河を初期宇宙に発見しました。

これまで、初期宇宙は若い銀河やガスの固まりが衝突を繰り返す混沌とした状態だったと考えられ、秩序だった回転する銀河などは存在しなかったと考えられていました。

現在見られる天の川銀河なども、長い年月をかけて成熟した銀河だと考えられてきました。

今回の発見は天の川銀河のような構造が、宇宙誕生からたった14億年程度ですでに整っていたことを意味しています。

これは銀河形成の理解に、新たな洞察を与えるものです。

目次
天の川銀河に似ている?
遠方銀河の詳細な観測

天の川銀河に似ている?

初期の宇宙に天の川銀河にそっくりな銀河が見つかる
(画像=天の川銀河。らせん状の腕やバルジなどの特徴を持つ。/Credit:NASA/JPL-Caltech/ESO/R. Hurt、『ナゾロジー』より引用)

今回発見された銀河は「SPT0418-47」と名付けられています。

この銀河は地球から約124億光年という距離に発見されました。現在宇宙の年齢は138億年と推定されているため、この発見位置は宇宙誕生から約14億年たった世界を意味します。

この銀河は、私たちの属する天の川銀河に非常によく似ていました。

似ていると言っても「SPT0418-47」は天の川銀河のようならせん状の腕は持っていません。しかし、天の川銀河が持つ典型的な2つの特徴である回転する銀河円盤と、中央の膨らみ「バルジ」を持っているのです。

初期の宇宙に誕生した若い銀河は活発に星を生み出していますが、ガスの固まりは衝突を繰り返し激しい熱を持っているため、秩序だった回転運動は行っていません。

さらに、大きな星がぎっちりと詰まった中央の星の集まり「バルジ」も持っていません。

こうした構造は、銀河が冷えて星々が秩序だって動くようになったあと、長い時間をかけて形成されるものだと考えられています。

そのため、比較的近い宇宙(最近の宇宙)で見つかるような成熟した銀河の特徴が、初期の宇宙で見つかったという事実は、これまでの私たちの銀河形成の理解に挑戦状を叩きつける存在なのです。

遠方銀河の詳細な観測

初期の宇宙に天の川銀河にそっくりな銀河が見つかる
(画像=観測対象との間にある銀河の重力を利用して遠方の光を集める重力レンズ効果によって、今回の観測が達成された。/Credit:ALMA (NRAO/ESO/NAOJ)/Luis Calçada (ESO)、『ナゾロジー』より引用)

今回と同じように、120億光年を超える距離で大規模な回転円盤を発見したという研究は、2020年5月にも報告されています。

そのときの観測では、クエーサーの吸収光から銀河の水素ガスの存在を発見していて、回転銀河の詳細をはっきり見ることはできませんでした。

「SPT0418-47」の発見はそうした研究に続くものですが、今回の観測では、重力レンズ効果を利用することで、非常に詳細に初期宇宙の回転銀河の姿を明らかにしています。

発見された銀河は重力レンズ効果によって、ほぼ完璧な光の輪になっています。形は歪んでしまっていますが、研究者たちはこれを解析して本来の姿へ戻すことができます。

初期の宇宙に天の川銀河にそっくりな銀河が見つかる
(画像=Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Rizzo et al.、『ナゾロジー』より引用)

この画像は撮影された銀河のガスの動きを表示したものです。青い部分は青方偏移を起こしている領域で、つまりは地球に向かって回転していることを示しています。

赤い部分は赤方偏移が確認される領域で、つまりは地球から遠ざかるように動いていることを示しています。

これを元に画像を再構成すると、「SPT0418-47」が中心に膨らみをもった円盤銀河であり、回転していることがわかったのです。

初期の宇宙に天の川銀河にそっくりな銀河が見つかる
(画像=重力レンズ画像から実際の形状を再構築している様子。/Credit:ALMA (NRAO/ESO/NAOJ)/Martin Kornmesser (ESO)、『ナゾロジー』より引用)