大きな浮き輪を自力で膨らませたことがある人もいるだろう。浮き輪が大きければ大きいほど、できるだけ息を一度に大きく吸い込み、口をすぼめてそれを浮き輪に吹き入れる。その動作こそがバキュームだ。バキュームと、ブレーシングの違いは、バキュームは息を吐いたときに腹をできる限り内側に引き込む。一方、ブレーシングでは腹を膨らませた状態で胴部を固く緊張させるようにする。ブレーシングは腹を膨らませながら腹横筋を緊張させることによって腹圧を高め、脊柱を保護しながら高重量の挙上を行うのに対し、バキュームは息を吐き出し腹横筋を強く収縮させて、腹を引き絞るイメージでへこませて保持することである。
文: Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
初級者向けのバキューム練習
1 床にあおむけになり、膝を立て、足裏は床につけておく。
2 肺に残っている空気を全て吐き出す。空気を全て吐き出すことで 横隔膜がリラックスし、同時に横隔膜は上方に持ち上がってくる。また、息を完全に吐き出すことで腹横筋を最大限に緊張させることができるはずだ。
3 息を全て吐き出したら、腹を内側&下方に押し下げるように力を入れる。息を吐き出しているので 苦しく感じるが、できるだけヘソを内側に引き込み、さらに下方に引き下ろすようにし、この状態を保つ(決して無理はしないこと)。
4 再び息を大きく吸い込んだら、全て吐き出してバキュームを行う。これを10回繰り返そう。この練習を毎日やることで、バキューム状態を保持できる長さを少しずつ延長していくことができるようになるはずだ。10 回を完了させる時間をタイマーで測定しながら、バキュームの練習を日々繰り返していこう。
5 あおむけでのやり方に慣れてきたら座位や立位など、さまざまな体勢でバキュームを行えるように試してみよう。姿勢を変えて行うことで、横隔膜を自由自在にコントロールすることが次第に容易に できるようになってくる。このことはボディビルのポージングでとても役立つはずだ。
上級者向けのバキューム練習
1 バキュームに慣れてきたら、四つん這いの姿勢でのバキュームにも挑戦してみよう。難易度の高い バキュームを練習することで、横隔膜の強化をさらに図り、より理想に近い体幹部を完成させることができるはずだ。
2 床に四つん這いになる。このとき、床についた両手が肩の真下に来るようにする。また、股関節は 膝の真上に来るように角度を調整しよう。
3 頭、首、脊柱はすべてニュートラルポジション(自然な角度)に保つ。反らせたり丸めたりしないこと。
4 準備ができたら、体の中に残っている空気を全て吐き出していこう。
5 息を吐き出したら、腹横筋を天井に向けて引き上げるようなイメージを作り、緊張させる。イメージが作りにくい人は、ヘソを背骨に近づけるように意識するといいだろう。四つん這いでのバキュームは、重力に逆らうので難易度が高いのである。
6 ヘソを体の中にしっかり引き込んだら、この状態をできるだけ長く保つ。10 回を1セットとして行ってみよう。最初のうちは初級者用バキュームの半分の時間しか保 持できないかもしれないが、徐々に保持時間を延長できるようになるはずだ。