火星の空にも、地球同様に雲が浮かびます。

火星探査機キュリオシティは、そんな火星の空で虹色に輝く「真珠母雲」など、通常とは異なる珍しい雲の画像を撮影しています。

ただ、火星の大気は薄く乾燥しているので、いつでも雲が見られるわけではありません。

まるで地球と同じような火星の空ですが、そこにはさまざまな謎が潜んでいるようです。

目次

  1. 火星に浮かぶ雲

火星に浮かぶ雲

火星にも雲はできますが、大気が薄くて乾燥しているため、曇りの日というのはめったにありません。通常、火星の雲は、この惑星が太陽からもっとも離れた軌道上にある1年でもっとも寒い時期に、地球で言うところの赤道付近に現れます。

しかし、ちょうど2年前(火星時間でちょうど1年前)キュリオシティは予想よりも早い時期に、上空に雲が形成されているのを発見しました。

前回は不意打ちだったため、十分な分析ができませんでしたが、今年はこの予想より早い雲を初期から捉えるために、NASAは準備を進めていました。

そして、1月下旬に最初の雲が出現した瞬間から、その様子を記録していったのです。

画像は氷の結晶で満たされた日没直後の雲の画像で、夕日を散乱させて雲がきらめいているのがわかります。

こうした画像は、単に壮観な火星の風景というだけでなく、雲がどのように形成されていて、なぜ今までと異なっているのかを理解するために役立ちます。

実際、火星の雲を撮影していくことで、キュリオシティのチームは1つの新しい発見をしました。それは、早期に形成された雲は、通常よりも高い高度に浮かんでいるということでした。

ほとんどの火星の雲は、上空約60キロメートル以内に、水氷によって形成されます。

しかし、今回キュリオシティが撮影した雲は、もっとずっと高い高度にあり、非常に冷たい場所にあるため、水氷ではなく凍った二酸化炭素(ドライアイス)でできている可能性が高いと考えられます。

ただ、この雲の高度が具体的にどのくらいの高さなのかは、まだ科学者は特定できていません。

キュリオシティのモノクロナビゲーションカメラの画像では、この雲の細かく波打つ構造を確認することができます。

この画像は日没直後から、時間ごとの変化を映していて、太陽は右側へと沈んでいます。

この様子を見ると、氷の結晶が薄れていく夕日を受けて暗くなる空に向かって輝いているのがわかります。

こちらも同様に、別の日の日没直後の画像です。

太陽の位置が雲の形成されている高度を下回ると、その位置の雲は暗くなっていきます。

これは雲の存在する高度を推定するための重要な手がかりとなるのです。

さらに、キュリオシティは虹色に輝く美しい「真珠母雲(しんじゅぼぐも:Mother-of-pearl clouds)」も撮影しています。

レインボーに輝く火星の「真珠母雲」を探査機キュリオシティが撮影
(画像=2021年3月5日にキュリオシティが撮影された虹色に輝く火星の真珠母雲。 / Credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS,『ナゾロジー』より 引用)

真珠母雲は地球でも成層圏(高度20~30km付近)にできる虹色の特殊な雲です。

「きらめくパステルカラーに雲が見えるのは、雲の粒子のサイズがほぼすべて同じだからです。

 雲が形成された後、すべて同じ速度で成長した場合、こうした雲が発生します」

NASAの宇宙科学研究所の大気科学者マーク・レモン氏は、そのように説明します。

また、彼は次のように付け加えています。

「これらの雲は、火星でもっともカラフルなものの1つです。

もし、キュリオシティの隣で空を眺めることができたなら、かすかではありますが、この色彩を肉眼で見ることもできるはずです。

火星で、何かがたくさんの色で輝いているのを見るのは、本当に素晴らしいです」

赤茶けた荒野ばかりが広がる不毛の火星でも、こんな虹色に輝く雲が見られる場合があるんですね。


参考文献

NASA’s Curiosity Rover Captures Shining Clouds on Mars(NASA)


提供元・ナゾロジー

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