子供のころ、食事を一緒に作ったり、部屋を掃除したりと、親の手伝いを楽しんだ人は多いでしょう。
新しい研究では、そのような「お手伝い」によって、私たちの能力が高まっていたと報告されています。
オーストラリア・ラトロープ大学(La Trobe University)に所属する心理学者ディアナ・テッパー氏ら研究チームが、子供にお手伝いをさせると学業成績や問題解決力が高まると報告したのです。
研究の詳細は、2022年5月31日付の学術誌『Australian Occupational Therapy』に掲載されました。
目次
お手伝いは実行機能の発達に役立っていた
子供が成長するうえで、実行機能の発達は非常に重要です。
この実行機能とは、目標を計画的に実行するために欠かせないものです。
例えばこの中には、目の前の状況を把握する能力、順序だてて考え計画する能力、衝動的に行動せずに気持ちを整理したり調整したりする能力、過去の記憶を現状と照らし合わせて判断する能力などが含まれます。
そして、この実行機能が十分に発達していると、宿題を計画的に行ったり、作業を段取りよく進められたりします。
逆に実行機能が十分に発達していないと、「皆が簡単にできていることが難しい」という状態になるのです。
では、親が子供の実行機能の発達を促すには、どうすれば良いでしょうか?
今回研究チームは2020年半ばに、お手伝いと実行機能の関係性を調査することにしました。
5~13歳の207人の子供とその保護者に、子供たちが毎日こなしている家事の数と子供の実行機能に関するアンケートを依頼したのです。
その結果、自分の食事を作るなどの「自分のための家事」と、誰かに食事を作ってあげるなどの「家族のための家事」の両方が、高い実行機能と有意に関係していると分かりました。
お手伝いをたくさん行っていた子供たちは、作業を記憶する能力や行動する前に考える能力が高かったのです。
ちなみに、「ペットのお世話」と実行機能の高さには関連性が見いだされませんでした。
この結果について、テッパー氏は次のように述べています。
「ほとんどの家事が、自己の調整、注意の維持、計画、タスクの切り替えなどを必要とし、子供が手伝うことによって実行機能の発達が促されると考えられます。
そのため、定期的にお手伝いをする子供は、学業や問題解決など、生活の他の面でも優秀になる可能性があります」
そしてお手伝いは、子供時代だけでなく、優秀な大人へと成長するためにも効果的だと考えられます。
なぜなら、実行機能の早期発達は、高等教育への参加や成人後の身体的健康・経済的地位の向上とも関係しているからです。
もしあなたに子供がいるなら、年齢や能力に応じてお手伝いをお願いすると良いでしょう。
きっと責任感や他の人を気遣う心が培われ、さらには物事をてきぱきとこなせる優秀な人に育ってくれるはずです。
提供元・ナゾロジー
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