健康保険証は病院で受診するときに必要だ。身分証明書にもなるが、これを紛失すると思わぬトラブルに巻き込まれる可能性がある。自分や家族が健康保険証を紛失してしまった場合に備え、再発行の手続きや対処法を正しく理解しておきたい。

健康保険証を紛失したらまずは警察と発行元へ届出を

健康保険証を紛失した場合、まず行うべきは「警察への届出」である。健康保険証を本人確認用の身分証明書として認めている業者があるためだ。

最近では健康保険証だけで身分証明書として利用できいないケースは増えているが、審査のゆるい消費者金融なども依然存在する。健康保険証を拾った人に悪用され、勝手に借金をされるといった被害に遭う恐れがあるのだ。

警察への届出は「遺失届出書」を作成することにより行う。届出完了時に通知される「受理番号」は保険証の再発行の際に必要になる場合があるため控えておくといいだろう。また300円と有料にはなるが、遺失届出証明を発行してもらうこともできる。

警察への届出を済ませた後は、健康保険証の発行元や勤務先の担当部署にも健康保険証を紛失したことを報告する必要がある。

健康保険証を紛失した場合の再発行の手続きは保険証の種類によって違う

健康保険証を紛失した場合には再発行しなければならないが、そのために必要な手続きは健康保険証の種類によって異なる。

社会保険(健康保険)に加入している場合は勤務先へ

会社員が加入する社会保険には主に大企業などが単独または共同で運営する「組合管掌健康保険」と、主に中小企業などが加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会)」がある。

社会保険に加入している人(被保険者)が健康保険証を紛失した場合、再発行の手続きは事業所(勤務先の会社)を通して行う。被保険者は勤務先の担当部署に健康保険証を紛失したことと再発行を希望することを伝え、必要書類(「健康保険被保険者証再交付申請書」、本人確認書類など)を提出すればよい。

健康保険被保険者証再交付申請書には被保険者証の記号と番号、氏名、生年月日、住所、再発行が必要な対象者、再発行の原因などを記入する。紛失による再発行では、紛失の状況についても記入する必要がある。

再発行にかかる手数料は、組合管掌健康保険では組合ごとに手数料が定められている。加入している組合によっては500円~2,000円程度かかるが、盗難による場合で警察に「被害届」を提出していれば手数料が免除されるケースもある。協会けんぽであれば無料だ。

健康保険証の再発行に手数料の必要な健康保険組合の例を以下に示す。(※2019年11月29日時点)

  • 東京都食品健康保険組合…1枚につき500円
  • 三菱健康保険組合…1枚につき1,000円
  • 日産自動車健康保険組合…1枚につき2,000円

被保険者から再発行依頼を受けた事業所は健康保険証の発行元(健康保険組合や全国健康保険協会など)に対して再交付を申請し、これが受理されると健康保険証は一旦事業所に交付され、その後に被保険者に配布される。

任意継続で健康保険に加入している人は発行元へ

退職後に任意継続で社会保険に加入している人は、本人が発行元に直接必要書類を送付して再発行の手続きを行う。

国民健康保険に加入している場合は市町村役場の担当課へ

国民健康保険に加入している人が健康保険証を紛失した場合、市区町村役場の担当課(年金課など)窓口で再発行の手続きを行う。市区町村によっては郵送での手続きも可能だ。

申請は原則本人または同居の家族(住民票上同一世帯の人に限る)が行う。やむを得ずそれ以外の人が申請するには委任状が必要になる。

・再発行の手続きには本人確認書類とマイナンバー確認書類が必要
手続きに必要な書類は、「申請者(窓口に出向く人)の本人確認書類」と「世帯主および再発行を行う人のマイナンバー(個人番号)を確認できる書類」の2点だ。

代理人が申請を行う場合には、世帯主または再発行を行う人の記入した委任状も必要になる。家族であっても住民票上の住所が違えば代理人として委任状が必要になるため注意しよう。

そのほか必要な書類がある場合には各自治体のホームページに掲載されているため、事前に確認してほしい。

・健康保険証の再発行は原則郵送だが窓口交付も可能
健康保険証の再発行は郵送が原則となっている。ただし本人または同一世帯の家族が窓口に出向き、官公庁が発行する顔写真付きの身分証明書で本人確認ができれば窓口で保険証を受け取れる。

被扶養者が保険証を紛失した場合は扶養者が再発行の手続きを行う

妻や子どもなど、扶養に入っている人が健康保険証を紛失した場合は、扶養者であり保険加入者である夫あるいは親が再発行の手続きを行う。

健康保険証の紛失中に病院へ行くことになった場合の2つの対処法

一般に保険証を提示せず受診すると医療費は全額(10割)負担となる。また病院によっては自費扱いになることもある。

健康保険証の代わりに証明書を発行してもらえる

健康保険証が手元に届くまでの間に受診の予定がある場合、国民健康保険であれば担当課窓口で申請すれば被保険者であることの証明書を発行してもらえる。この証明書を健康保険証の代わりに医療機関の窓口で提示すればこれまで通り保険診療を受けられる。

自己負担分を超えて支払った医療費は払い戻しを受けられる

一部負担金(自己負担分)を超える医療費を支払った場合には、後日、健康保険証を提示することで払い戻しを受けられる。払い戻しの手続きは病院の窓口で行うか、健康保険証の発行元である健保などに請求する。

健康保険証を紛失し、万が一悪用されてしまった場合の対処法

紛失した健康保険証が悪用されてしまったらどうすればよいのだろうか。

身に覚えのない請求には応じる必要はない

健康保険証が身分証明書として不正使用され、消費者金融などから身に覚えのない請求をされとしても、請求に応じる必要はない。不正利用により名義が勝手に使われていたとしても、消費者金融との間に契約は成立していないため当然支払義務もない。

相手が悪徳業者などで強引に支払いを要求してきたとしても絶対に支払わず、すぐに警察や国民生活センターなどに相談しよう。

健康保険証を紛失しても利用停止や保険証番号の変更は行えない

健康保険証は紛失しても保険証自体を無効にして、保険証番号を変更することはできない。この点はカード自体を無効にして不正利用を防げるクレジットカードとは違う。

健康保険証のトラブルを防止するためには本人申告制度を利用するのも手

健康保険証紛失によるトラブルを回避する方法としては、「本人申告制度」を利用する手がある。

「本人申告制度」は、健康保険証をはじめとする身分証明書を紛失した場合に、個人情報を個人信用情報機関に登録する制度のこと。個人情報信用機関に加盟する会社は、貸付を行うときに登録されている信用情報を参考に判断している。その際、登録者の申告情報も併せて確認することで、より適切に与信審査を行えるのだ。

個人情報信用機関には、銀行系の「全国銀行個人情報信用センター」、クレジット系の「株式会社シー・アイ・シー」、消費者金融系の「株式会社日本信用情報機構」などがある。健康保険証を紛失した際は、こういった機関にも届出をしておくと安心だろう。

健康保険証は紛失させないことが第一

健康保険証を紛失してしまった場合には、「警察への届出」「再発行手続」、不正利用の心配があれば「本人申告制度による登録」という3つの対処法がある。

なくしてしまった場合の対処法を理解しておくことも大切だが、健康保険証をなくさないよう管理には十分気をつけてほしい。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
 

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