チリ・カトリック大学の最新研究により、音楽を習っている子どもは、そうでない子どもに比べ、記憶力と注意力が非常に高いことが明らかになりました。
10月8日付けで『Frontiers in Neuroscience』に掲載された報告では、「音楽訓練を受けた児童は、注意力のコントロールや聴覚機能にかかわる脳領域が活発であり、高い創造性と読解力、質の高い生活を有していた」と述べられています。
自身もバイオリニストである研究主任のレオニー・カウゼル氏は「早い時期から音楽トレーニングを施すことで、子どもの認知機能を高めることが期待できる」と指摘しました。
音楽をする子どもは「注意・記憶力」のスコアが高いことを実証
研究チームは、チリの10〜13歳の子ども40名を対象に、注意力とワーキングメモリ(作業記憶)を評価するタスクを行いました。
ワーキングメモリとは、短時間で情報を記憶し、同時に処理する能力を指し、日常の作業(会話や読み書き、計算力)に大きくかかわります。
半分の20名の子どもは、日頃から音楽を習っており、最低でも2年間のレッスンを受け、定期的に演奏発表をしています。残りの20名は、コントロール群として選び、学校の授業以外では音楽を習っていません。
同チームは、タスクの間、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて子どもたちの脳活動をモニタリングしています。
調査の結果、両グループに反応時間での差はなかったのですが、音楽をする子どもで、記憶力と注意力の高いスコアが示されました。
音楽は脳内ネットワークを広く活性化させる
脳の動きを見てみると、音楽をする子どもには「中央実行系ネットワーク」にかかわる脳領域が強く活性化していました。
中央実行系ネットワークは、注意のコントロールや処理情報の配分といった高次の認知活動をつかさどります。
このネットワークは、言語的短期記憶(音声で示された単語や文章などの情報)の貯蔵庫と連動することで情報処理を行います。
音楽をする子どもたちは、この連動が活発であるために優れた認知機能を示していたのです。
さらに、聴覚機能にかかわる脳領域も、音楽訓練を受けた子どもの方が活発でした。これには、下前頭回と縁上回が含まれ、どちらも聴覚処理とワーキングメモリの働きに関係しています。
その上、感覚情報と言語を処理するのに重要な領域である「視床」も強い活性化を示しました。
この結果から、音楽訓練は、認知機能を向上させるのに非常に有効であると結論できます。
また、カウゼル氏は「ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ子どもたちの注意や記憶力の向上にも、音楽トレーニングが効果的と思われる」と指摘しました。
子どものうちから楽器を習うことで、柔軟なモノの考え方や創造力を獲得できるかもしれません。
参考文献
iflscience
neurosciencenews
提供元・ナゾロジー
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