中央アジアの砂漠に分布する「オオクチガマトカゲ(学名:Phrynocephalus mystaceus)」は、一見すると、地味で小さな普通のトカゲにしか見えません。
しかし彼らは、非常にユニークな特性を隠し持っています。
それは”両頬に折りたたんだヒダ”にあり、何かあると、このヒダをプレデターのように左右にパッと展開させるのです。
研究者らは、以前からこの特性の存在には気づいていましたが、その正確な用途まではわかっていませんでした。
大方は「威嚇」の説が有力なのですが、一方で、異性への求愛や同性間の争いなど、「性に関わるディスプレイ」の説も指摘されています。
そんな中、中国科学院(CAS)の新たな研究で、ヒダの展開はやはり天敵への威嚇、それも”近距離にいる攻撃者への威嚇”の可能性が高いと示唆されました。
反対に、性にまつわる行動にはあまり使用しないようです。
研究の詳細は、2022年5月30日付で科学雑誌『Biological Journal of the Linnean Society』に掲載されています。
オオクチガマトカゲはどんな生き物?
オオクチガマトカゲ(学名:Phrynocephalus mystaceus)は主に、中国北西部やタジキスタン、トルクメニスタンなどを含む中央アジアの乾燥地帯に広く分布しています。
小〜中型のトカゲで、成体の全長は尻尾を入れて24センチ程度。体色は砂漠に同化しやすい砂色で、腹部は乳白色をしています。
2年ほどで成熟し、メスは4〜7月の間に産卵。通常2〜6個の卵を産み、それぞれ70日ほどで孵化します。
彼らの生態には、砂漠環境で生き延びるための様々な工夫が施されています。たとえば、手足の指には櫛(くし)状の突起が生えており、これがスパイクのような働きをして、柔らかい砂の上でも俊敏に動けるのです。
また、砂を掘るのにも優れており、日差しの強い日中は砂中に身を潜めています。
涼しくなった朝方や夕暮れ時に穴から出て、好物である昆虫の狩りをします。
暑さの厳しい夏の間は、基本的に夜間行動となるようです。
そして最大の特徴は「両頬のヒダ」で、普段は折りたたまれていますが、これを左右に開くと、真っピンクの内頬があらわれ、見る者を驚嘆させます。
研究チームは今回、このヒダがどういう用途で使われるのか、詳しく調査することにしました。