人間の体は怪我をしても自然と修復されますが、ロボットやドローンなどの機械は破損してしまったら誰かが修理するまでそのままです。
将来過酷な環境で、単独で稼働しなければならないロボットを想定した場合、破損部位を自己修復する仕組みは必須になってくるでしょう。
2月22日にアメリカ化学会が発行する科学雑誌『Nano Letters』で発表された新しい研究は、体を切断されても磁性によって元の形へ自己修復する魚型の泳ぐロボットを開発したと報告しています。
これは自己修復機能を備えたロボット開発の基礎技術となる可能性があります。
目次
自己修復する小さなロボット
切断されても泳ぎながら再生するロボットの様子
自己修復する小さなロボット
近年は小型のロボット開発が進んでいます。
非常に小さなロボットは、環境の浄化作業や、人間の体内に入って投薬や手術のサポートをするなどの利用が想定されています。
こうしたロボットたちは、人の手を借りずに単独で活動することが求められています。
そこで問題となってくるのが、ロボットの破損です。
これらの環境中を泳ぐロボットはたいてい壊れやすいポリマーや柔らかいゲルでできていることが多く、簡単に割れたり裂けたりする可能性があります。
人間の体は、多少の損傷なら自然と修復されますが、ロボットの場合は、人の手で修理をおこなわなければなりません。
そこで今回の研究チームは、人の手を借りることなく、運動中に自分自身を修復できるロボットを設計しようと考えたのです。
研究者たちが作ったのは、長さが2cm(指の幅程度)の泳ぐ魚型ロボットです。
このロボットの尻尾にはプラチナが使われていて、過酸化水素溶液に入れると、プラチナが化学反応を起こして酸素の泡を発生させ、これが推進力となって泳ぎ回ります。
背骨のように入れらた磁石と、整列した磁性粒子が表皮に印刷されていて、この魚型ロボットは全体が磁石のように振る舞っています。
この整列した磁気トルクによって、このロボットの体は切断されても損傷箇所の向きや、接合部分を記憶していて、元の正しい形に戻ろうとします。
研究者はこれを元に、開発したロボットを実際に2分割や3分割に切断してみて、元通りに再生されることを確認しました。
その様子も、動画として公開されています。
切断されても泳ぎながら再生するロボットの様子
実際に切断してみたロボットが、再生する実験の様子の動画があります。
これを見ると切断されたロボットの動力部である尻尾がくるくると泳ぎ回って、胴体を見つけ元通りの形へきちんと復元されているのがわかります。
さらにこれは、体が3つに分割された場合でも、やはり元通りに再生することができるのです。
これはロボットの体に埋め込まれた磁性によるもので、元あった磁性の配列に戻ろうとしてロボットは元通りの正しい形に再生されています。
これはまだ実験室の中の限定された環境だけで再現されている効果ですが、研究者は、シンプルな構造で高速で自己修復が可能な方法であり、幅広い用途へ応用が可能だと語っています。
この研究が示す技術は、将来的に自己修復を行うロボットの重要な最初のステップになる可能性があります。
確かに、この研究を見ていると、有名な映画のワンシーンが思い浮かんでしまいます。
これは『ターミネーター』のような映画で描かれる世界に向かう、最初の一歩になるのでしょうか。
参考文献
Small robot swimmers that heal themselves from damage (eurekalert)
元論文
Swimmers Heal on the Move Following Catastrophic Damage
提供元・ナゾロジー
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