現代ではさまざまなものにセンサーや通信機器が取り付けられていますが、新たな技術は傷を覆う包帯にそんな機能を内蔵することに成功しました。

1月15日に科学雑誌『AdvancedFunctionalMaterials』に掲載された新しい研究は、カーボンナノチューブのセンサーを包帯の繊維に埋め込み、傷が感染症になっているか監視するシステムを開発したと報告しています。

このデバイスが実用化されれば、傷の感染症を早期に診断し、抗生物質の使用を最小限に抑えたり、手足の切断につながる危険を抑止できる可能性があります。

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過酸化水素の濃度をチェックする包帯

研究中のウェアラブルデバイスを研究者たちは「スマート包帯(Smart Bandage)」と呼んでいます。

感染症を監視するというスマート包帯が行っているのは、単相カーボンナノチューブを使った傷の過酸化水素濃度のチェックです。

傷口に病原菌が存在するとき、マクロファージなどの白血球は細菌と戦うために活性酸素を放出します。

傷口が感染するか監視する「スマート包帯」を開発中!巻くだけでスマホなどに情報を送信
(画像=白血球は細菌と戦うために活性酸素を放出する。 / Credit: 東海国立大学機構 岐阜大学 高等研究院 科学研究基盤センター 共同研究講座抗酸化研究部門、『ナゾロジー』より 引用)

過酸化水素は活性酸素の一種で、この濃度を見ることで傷に感染症の危険がないかを確認しているのです。

カーボンナノチューブをカプセル化されて、包帯の繊維の内部に配置すされていて漏出することはありません。

カーボンナノチューブは過酸化水素の濃度によって蛍光による信号を出し、この信号をデバイスがワイヤレス(光学的)に検出します。

次にデバイスは情報をスマートフォンなどへ送信し、患者の状態について必要に応じて警告するのです。

繊維内部にナノセンサーを正確に配置するために、研究チームは最先端の顕微鏡を利用して包帯の材料構造を研究し、さらに専用の近赤外線分光計を自作したといいます。

傷口が感染するか監視する「スマート包帯」を開発中!巻くだけでスマホなどに情報を送信
(画像=ナのセンサーを包帯の織物内部へ配置するシステム。 / Credit:URI,Negar Rahmani,『ナゾロジー』より 引用)

カーボンナノチューブに基づいてウェアラブルデバイスを設計するというアイデアは、非常に有望だと研究者は語っています。

この技術によって、違和感なく使用できる包帯で機能するデバイスが実現できたのです。

現在、研究はこのデバイスを埋め込んだ包帯の小さなサンプルを使い、培養細胞を含んだペトリ皿で適切に機能するかの実験中だといいます。

傷口が感染するか監視する「スマート包帯」を開発中!巻くだけでスマホなどに情報を送信
(画像=実験で使用されている、スマート包帯の小さいサンプル。 / Credit:URI,Negar Rahmani、『ナゾロジー』より 引用)

実用段階には、まだ遠く、この培養細胞での実験がうまく行けば、次はマウスを使ったテストに映るそうです。

このデバイスは、診断目的でのみ使用されるもので、具体的に何か治療を施すようなものではありませんが、感染症の早期発見に役立ちます。

これは怪我の際に、抗生物質の使用量を減らしたり、手足の切断が必要となるような危険な状態を予防することが期待されています。

具体的には、慢性創傷の管理が日常的に必要となるような、糖尿病患者で特に役立つと考えられます。 包帯さえも診断デバイスの1つとなる日も、近いのかもしれません。

提供元・ナゾロジー

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