腕時計が普及した1940年代以降になると、日常に役立つ付加機能が徐々に求められるようになった。その最たるものがカレンダー機能である。一般的なデイト表示だけでなく、月・曜日表示、さらにはムーンフェイズ表示まで備えたセミコンプリケーション・ムーヴメント(機構自体は古くからあった)が開発されるようになる。その後、50年代になると、複雑カレンダーモデルは時代を象徴するデザインとして人気を博したのである。
もっとも、その開発は容易ではなかったため、製造できたのは限られたメーカーだけである。当時複雑カレンダーモデルを展開していたのは、雲上系ブランドに加えてジャガー・ルクルトやモバード、フェルサ、ユニバーサル、バルジュー、オメガなどが挙げられる。加えてこうした複雑カレンダーモデルが流行したのは、40年代〜60年代にかけてであったため、タマ数はそれほど多くない。
高い実用性を有する反面、機構の複雑さゆえに故障のリスクも少なくないなど、正直ビギナー向けとは言い難いのだが、アンティークを代表する人気ジャンルのひとつであり、デザインも魅力的なものが多いため、今回取り上げさせていただいた。最初の1本で無理に狙わず、アンティークウオッチに多少慣れてから購入することをおすすめする。
ジャガー・ルクルト[Cal.484/1AW]
モバード[Cal.473]
オメガ[Cal.381]
ユニバーサル・ジュネーブ[Cal.281]
それぞれ相場は安くないものの、信頼性の高い4種をセレクトしている。なかでもおすすめは484/1AWである。
このムーヴメントのベースとなっている449は、有名なジオフィジックなどにも搭載され、手巻きの傑作としても知られるキャリバーだ。また当時の一般的なフルカレンダー機能では、月表示を手動で切り替える必要があったのに対し、484/1AWでは自動送り装置を備えていた。基本性能の高さに加えて、実用性という点でも優れていたのである。なお484/1AW搭載モデルでも個体によって価格に開きがある。これはムーヴメントを含むコンディションに依るところが大きい。相場よりもあまりにも安く設定されている場合は、外装のチェックはもちろん、カレンダー機能が正常に動作するかどうかの確認は必須だ。
また今回取り上げた以外の複雑カレンダーモデルもいくつかあり、なかには30万円台と安価な相場で流通している個体もある。ただし、こうしたモデルの多くは廉価版のエボーシュを搭載している。ここで取り上げたムーヴメントに比べて、故障のリスクがやや高くなるため注意が必要である。
文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修
提供元・Watch LIFE NEWS
【関連記事】
・【第4回-セイコー(プレザージュ&セイコー 5スポーツ)】3大国産時計の売れ筋モデルを調査、本当に売れた時計BEST3
・【1位〜5位まで一挙に紹介します】“タイムギア”読者が選んだ、欲しい腕時計ランキングTOP10-後編
・進化したエル・プリメロを搭載したゼニスの意欲作、“クロノマスター スポーツ”が登場
・菊地の【ロレックス】通信 No.078|小振りで着けやすいベーシックな旧エアキング
・アンティークの無名クロノグラフって知ってますか?