どんな世界でも昔からのやり方が永遠に続くわけではない。必ず時代の変遷とともに革命が起きたり、新風が吹き込んだりして「変化」が強いられるものだ。振り返ってみればボディビル界もそうだった。1960年代までのボディビル界は、基本的な全身のワークアウトを行うことが主流だった。1回のワークアウトで全身の筋肉をまんべんなく刺激する内容のワークアウトだ。

文:Jason Smithers, CSCS 翻訳:ゴンズプロダクション

新しいやり方が求められた

1960年代後期に入って、若者たちは冒険をするようになった。ちょうど「身体づくり」の舞台がマッスルビーチからベニスに移ったのと同じ時期のことである。かっこいい身体、パワフルな肉体を目指してトレーニングを行うようになった若者たちが、さらには食事を工夫し、そして部位ごとのワークアウトを作って試し始めたのだ。

全身をいくつかのパーツに分け、個々のパーツに対してワークアウトを行うようになった。部位ごとのスプリットルーティンである。1回で全ての部位を刺激するのではなく曜日によって刺激する部位を変える。いわゆる分割という考え方だ。この方法だとひとつの部位に行う種目数を増やすことができたのだ。

コンテストが近づくと1日2回ジムにやってきて、2つの部位を刺激するトレーニーも現れた。いわゆるダブルスプリットである。そしてさらなる強度を高めるためのテクニックなども盛り込まれ、新種のサプリメントや食事法が試され、このころのトレーニング界は常に進化し、新しいやり方が求められていったのだ。その方法を解説していく。

スーパーセット法の誕生

今では多くの人がスーパーセット法を盛り込んだワークアウトを行っているが、このテクニックが誕生したのはそういった時代背景があったからだ。

それまでにも2つの種目を組み合わせたやり方はあったのだが、スーパーセットが爆発的な人気を得たのは、まさに革新的なやり方が求められた時代に入ってからのことだ。

例えば、特定の部位のための種目を2つ選択し、それを1セットずつ連続して行う。1セットずつ終えたら、それを1サイクルとカウントし、休憩を挟んで2サイクル目を開始する。これがよく行われてきたスーパーセットのやり方である。

それを、例えば上腕二頭筋ならバーベルカールとプリーチャーカールを組み合わせて1セットずつ連続して行う。こうすることで上腕二頭筋の筋緊張時間が、1種目を1セットだけ行ったときよりも長くなり、筋発達の効果が期待できるというのが理屈である。 もちろん、組み合わせる2種目は必ずしも同じ部位である必要はない。例えば拮抗筋同士の種目を組み合わせたらどうだろうか。拮抗筋とは表と裏の筋肉だ。上腕二頭筋の拮抗筋は上腕三頭筋、大腿四頭筋ならハムストリング(大腿二頭筋など)背中なら胸が拮抗筋になる。当時はそんな組み合わせもよく行われていたのだが、興味深いのは、誰が何の根拠があってそのようなアイディアを出したかである。

当時のスポーツ界はウエイトトレーニングを敬遠する傾向があった。ウエイトトレーニングで大きくした筋肉は動きの邪魔になる、あるいは俊敏な動作の妨げになるなどと言われていたのだ。

筋発達によるメリットを研究する学者も当時はほとんどおらず、ましてや筋発達に貢献するトレーニングのやり方を模索するような研究者もほとんどいなかった。そのため、拮抗筋のスーパーセットが筋発達に役立つかどうかを調べる雰囲気も全くなかった時代だったのだ。それなのにもかかわらず、筋発達を望むボディビルダーたちは、自ら直感的に拮抗筋のスーパーセットを試すようになったのである。

ベニスビーチ界隈でトレーニングを行っていたボディビルダーたちは、まさしく科学の先端を走り、実験や研究は後から付いてきた。試行錯誤を繰り返しながらトレーニングのやり方をアレンジし、そうしてひとつずつ確立していったのである。

後に、研究者たちが彼らのやり方の効果の有無を科学的に検証するようになったわけだが、多くケースにおいてその効果は科学的に立証されているのだ。

提供元・FITNESS LOVE

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