南米アマゾンに生息する「デンキウナギ」は、1匹で860ボルトの電流を発生させられます。
彼らは単独で狩りをするのが基本ですが、このほど、ブラジルの熱帯雨林で群れをなして狩りをするデンキウナギが初確認されました。
撮影された映像では、死の電気ショックを浴びた大量の小魚が、いっせいに水面に飛び上がる様子が見られます。
いっせい放電で一度にエサを大量捕獲
まずは、国立アマゾン研究所(INPA)により、ブラジルのイリリ川で撮影された15秒ほどの映像を見ていただきましょう。
かすかにビリッと音がした直後、何十匹もの小魚がそのショックで水面に飛び上がっています。
周囲には100匹近くのデンキウナギが群がっており、動かなくなった小魚をゆうゆうと食べに集まります。
これ以前、デンキウナギは単独の捕食者であり、一度に1匹の獲物しか攻撃しないと考えられていました。
「哺乳類では日常的に群れで狩りをするが、魚類ではあまり見られず、とくにデンキウナギでは初のことでした」と研究主任のデイビッド・デ・サンタナ氏(スミソニアン自然史博物館)は話します。
その狩りの仕方は次のとおりです。
まず、デンキウナギの群れが、浅瀬に集まっている獲物を取り囲み、逃げ場をなくします。
次に、群れを代表する2〜10匹のデンキウナギが獲物にそっと近づき、同時に放電します。
いっせいに放たれる電気ショックは1匹の時よりもはるかに強力で、獲物たちは一瞬で気絶あるいは絶命してしまいます。
あとは全員で水面に力なく浮く獲物を食べるだけです。
これが1時間で5〜7回繰り返されていました。
サンタナ氏によると、デンキウナギの放つ電流は、人に当たっても皮膚に強いシビレを引き起こすほどの威力です。
ただし放電時間がほんの一瞬なため、1匹のデンキウナギであればそれほど危険はありません。
しかし、大群に遭遇した場合は、水辺にさえ近づかないようにしているそうです。
サンタナ氏は「相手が警戒している場合、デンキウナギが個別に狩りをするのは非常に効率が悪い」と指摘します。
しかし、仲間と協力すれば、放電の力が上がり、通常より離れた位置からでも相手を狙うことが可能です。
その一方で、群れでの狩りは特別な状況下でのみ行われ、基本的には単独での狩りがメインとなっています。
研究チームの仮説では、エサが豊富な場所(小魚の群れがいる)、デンキウナギが多数で長期間滞在できる場所(川が広く、身を隠す割れ目などがある)が必要な条件です。
そして、これらをクリアした環境は、今のところアマゾンの熱帯雨林にしか存在しないと考えられています。
参考文献
phys
livescience
提供元・ナゾロジー
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