米商務省は27年までに海外から旅行者9000万人を呼び込む5カ年の観光戦略を策定した。地方への誘客促進や気候変動への対応などが柱。旅行・観光産業は米国最大のサービス輸出で、19年に7940万人を誘致し534億ドルの貿易黒字を生み出した。コロナ禍からの回復途上にあるなか、年間消費額でコロナ前の2400億ドルを上回る2790億ドル(約36兆円)を目指し、重要産業を再興する。

 戦略は4つの柱で構成されるが、特に重点が置かれているのが地方への誘客だ。多様性や米国らしさを魅力として訴求するため、地域特有の体験コンテンツを充実させる。小さな町村や小規模事業者が海外市場に向けて観光商品を開発しやすくするため、各種支援制度を用意する。

 これと同時に、地域の文化や環境の保護に取り組み、サステナブルなデスティネーションとしての地位を確立する。旅行・観光分野の温室効果ガス排出量を削減し、30年までに50~52%減らす国家目標への貢献も明記した。地方などローカルコミュニティーで高品質・高付加価値な体験を求める旅行者ニーズは高まっているが、環境へのインパクトが懸念される。このバランスを取ることが重要として、地域の観光計画策定も支援する。

 このほか、コロナ禍で得た知見を生かし、最新テクノロジーを活用した入国手続きや旅行者管理の改善、各種サービス手続きのオンライン化による生産性向上にも取り組む。

 米商務省によると、米国を訪れる海外旅行者は20年に1920万人まで落ち込んだが、入国制限の緩和により、21年は2210万人に回復した。その一方で、消費額は20年の842億ドルから810億ドルへ減少している。

提供元・トラベルジャーナル

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