400年以上前に発見されていたミイラの中身がついに解明されました。
この2体のミイラは、古代エジプトのネクロポリス(共同墓地)である「サッカラ」で発掘され、棺ではなく、肖像画と精巧な装飾がほどこされた布で包まれています。
同様のミイラはこの他に、エジプトに展示されているものを含め、3体しか現存していません。
今回は、この3体を対象にCTスキャン(コンピューター断層撮影)で遺体を調査しました。
研究はライス・エンゲルホルン博物館(独)により、11月4日付けで『PLOS One』に掲載されています。
目次
1615年にイタリア人作曲家が持ち帰った
3体のミイラの中身は?
1615年にイタリア人作曲家が持ち帰った
サッカラで見つかった2体のミイラは1615年、イタリア人作曲家のピエトロ・デラ・ヴァレ(1586〜1652)によりローマに持ち帰られました。
ヴァレは、世界各地の聖地を巡礼する旅の最後にエジプトを訪問し、そこで2体のミイラに出会ったといいます。
それらは、石棺に納められた一般的なミイラと違い、木の板の上に安置され、装飾をほどこした織物で包まれていました。
そのため、「ヨーロッパに紹介された最初の肖像ミイラ」となっています。
2体のミイラはその後、複数人の所有者の手に渡り、最終的にドイツのドレスデン州立美術館に収蔵されました。80年代に一度、X線写真が撮影されましたが、詳しいことはわかっていません。
ただ肖像画が示すように、片方は男性、もう片方は女性の遺体が保存されていました。
3体のミイラの中身は?
CTスキャンにより、ミイラの中身の秘密が明らかにされています。
まず、男性のミイラは推定25〜30歳で、身長は164センチ、2本の永久歯といくつかの虫歯が発見されました。脳はなかったのですが、一般に脳を取りのぞく際にできる鼻元の傷痕が見られていません。
女性は推定30〜40歳で、身長は151センチ、左膝の関節炎が進行していました。こちらも脳は保存されていません。
また、男性のミイラは、誰かが一度包みを開いたらしく、一部の骨が折れたり乱れていました。
3体目のミイラは、推定17〜19歳の少女のもので、身長は156センチ、頭部に髪どめが見つかっています。
少女には脳の一部が残っており、縮小しているものの、大脳と脳幹が特定できました。内臓の一部も確認されています。
脊椎には、40代以上の人に多く見られる脊椎血管腫が発見されました。
また、3体のミイラすべてにコインが見つかっており、これは「死者が三途の川をわたる際に渡し守のカロンに払うもの」という意味合いがあります。
研究主任のステファニー・ゼッシュ氏は「いずれの生存年代もBC30〜AD395年の間のどこかであり、豪華に装飾された埋葬布から、社会的に身分の高い人物だったでしょう」と述べています。
提供元・ナゾロジー
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