お茶は、血圧を下げる作用があり、ダイエット効果、心臓病や癌の予防など健康上の利点が多いことが医学的な研究からも明らかになっています。
しかし、お茶の健康に良い作用を検証した研究は多くあるものの、どういったメカニズムでその作用が起こるのかを調査した研究はほとんどありません。
3月6日に科学雑誌『Cellular Physiology and Biochemistry』に掲載された新しい研究は、お茶に含まれるポリフェノール化合物が、体内のカリウムチャネルを活性化させることで血管を弛緩させているという、降圧の分子的メカニズムを報告しています。
このお茶の成分やメカニズムの解明は、将来有益な降圧薬の開発に役立つ可能性があります。
目次
古来より人々の健康を支えてきたお茶の効果
カテキンが血管の細胞をリラックスさせる
古来より人々の健康を支えてきたお茶の効果
吉川英治が描いた三国志の物語は、劉備が母のためにお茶を買おうとするシーンから始まります。
お茶は4000年以上前、中国で作り出されたといわれており、それから今まで世界で水に次いで消費されてきた飲料です。
古来よりお茶は健康に良いとされており、その効果は現代でも医学的な検証によって証明されています。
特にチャノキ(Camellia sinensis)をもとに生産された緑茶は、発がんの抑制、高血圧や心臓病のリスク軽減すると報告されています。
高血圧は、心臓病など健康上のさまざまなリスクを高める状態であり、長期間続くと血管を損傷させることもある危険な症状です。
お茶は一体どのようにして、この高血圧を解消させているのでしょうか?
これについて現在の研究では、効果は確認されていても、そのメカニズムに関する理解が不完全なままとなっています。
そこで、今回の研究チームは、お茶の健康作用の背後にある分子的なメカニズムを明らかにしようと調査をおこなったのです。
カテキンが血管の細胞をリラックスさせる
研究チームは、お茶の健康作用のもとと考えられているカテキンについて、コンピュータモデリングと突然変異誘発研究を利用して調査を行いました。
するとお茶に含まれるECG(エピカテキンガレート)とEGCG(エピガロカテキンガレート)という2種類のカテキン化合物がに、細胞の興奮を低下させる作用があるということを発見したのです。
細胞膜には、カリウムイオンを選択的に透過させる電位性依存カリウムチャネルというものがあります。
お茶に含まれる2つのカテキンは、このカリウムチャネルの鍵となっているタンパク質KCNQ5の電圧センサーに結合して、イオンチャネルを開いていたのです。
こうして、細胞内にカリウムイオンが取り込まれると、細胞は興奮性を低下させます。
つまり、カテキンは血管の細胞をリラックスさせる合鍵として機能していたのです。
これは非常に簡単なプロセスで血圧を一定量低下できる方法として、非常に興味深い発見です。
このカテキンのはたらきを利用して、新しくKCNQ5をターゲットした血圧改善の治療法を確立できる可能性があります。
また、今回の研究では、このお茶の降圧作用がもっとも有効にはたらく条件についても確認したといいます。
その条件とは、どのようなものなのでしょうか?