未来の世界では、空気中に漂うDNAから犯罪者を逮捕できるかもしれません。

3月31日に『PeerJ』に掲載された論文によれば、人間を含む動物の遺伝子を空気中から採取する技術が開発されたとのことです。

この技術は犯罪捜査や病原体の調査に革命的な変化が起こすと期待されています。

捜査を行う刑事たちは犯人のアリバイを空中に残留するDNAから判断することができますし、家やレストラン内部に病原体が存在するかどうかも空気を分析して判断することが可能になるかもしれないのです。

いったいどうやって空気中から動物のDNAを集めたのでしょうか?

目次
空気中のDNAを検出する技術が開発! 犯罪捜査と感染予防に革命か?
検出器によって捕えられたヒトの環境DNA

空気中のDNAを検出する技術が開発! 犯罪捜査と感染予防に革命か?

「空気」からDNAを検出できるようになった
(画像=土壌や水中から環境DNAを取り出せるようになってきた / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

近年の遺伝工学の進歩により、土壌や水中に存在するeDNA(環境DNA)を分析し、どのような生物が近くに住んでいるかを調べられるようになってきました。

環境DNAの分析は、生物の体から細胞を直接採取する必要がないため生態系に影響を与えずに、希少な動物たちの生態を解明することが可能です。

しかしこれまで環境DNAの採取は土壌や水中などに限られており、空気中については長らく盲点となっていました。

「空気」からDNAを検出できるようになった
(画像=しかし空気中から動物のDNAを採取する試みは行われてこなかった / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

空気は土や水と比べて拡散しやすく、植物の花粉などの例外を除けば、環境DNAの採取は現実的でないと考えられていたのです。

ですが今回、イギリスのクイーン・メアリー大学の研究者たちは常識に挑戦し、哺乳類(ハダカデバネズミ)を対象にした空気中の環境DNAの採取を試みました。

実験にあたってはまず、研究者たちは既存の空気清浄機などに使われている「HEPAフィルター」を掃除機に組み込み、ハダカデバネズミの飼育ケージと繋げて簡易の検出器を作成しました。

もし上手くいけば、掃除機のスイッチを入れてケージ内部の空気を吸い出すだけで、フィルターに環境DNAがからめとられるはずです。

ハンドメイド感あふれる検出器は、空気中の環境DNAをとらえられたのでしょうか?

検出器によって捕えられたヒトの環境DNA

「空気」からDNAを検出できるようになった
(画像=空気中のDNAを検出した結果ヒトのDNAが入っていた / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

見た目は掃除機そのものの検出器は、哺乳類のDNAを空気中から採取できるのか?

研究者たちがフィルターに付着した粒子へPCR検査を行った結果、ハダカデバネズミの遺伝子を検出できました。

さらにフィルターに付着していたハダカデバネズミ以外の動物の遺伝子を調べた結果、ヒト・犬・羊の遺伝子も含まれていることが明らかになったのです。

研究者たちははじめ、ハダカデバネズミ以外の遺伝子は人為的なミスによる汚染だと思っていましたが、何度実験を繰り返しても、ほとんどの場合において、ヒトの遺伝子が検出され続けました。

この結果は、簡易な操作を行っただけに過ぎない人間の環境DNAをも、検出器はとらえていたことを示唆しているのです。