ヤドカリにもバイブ機能があるんです。

アメリカ・ダートマス大学が2019年に発表した研究で、ヤドカリはライバルを撃退する際に、自分の貝殻を振動させることが判明しました。

振動には強弱があり、その強さによって貝を奪おうとするライバルは続行か退散かを選んでいるのです。

また振動は、単なる撃退以上にヤドカリ同士の大切なコミュニケーションにもなっているのだとか。

研究は、2019年4月3日付けで『Biology Letters』に掲載されたものです。

目次

  1. 振動は大切な「コミュニケーション」

振動は大切な「コミュニケーション」

コスタリカ・オサ半島のビーチで実施された実験では、太平洋に分布するヤドカリ(学名:Coenobita compressus)を対象に、貝殻の振動効果が調べられています。

チームは、砂浜に描いた円の真ん中に貝殻を置き、1匹のヤドカリを放して貝を奪おうとする様子を定点カメラで撮影しました。

ちなみに貝殻の中身は空っぽで、代わりに強さを調節できるミニチュアの振動装置を入れています。

入ってますよ!ヤドカリは貝殻を振動させることでライバルに満室を知らせる
(画像=実験方法の様子 / Credit: Biology Letters、『ナゾロジー』より 引用)

振動の強弱を変えてみた結果、振動が「弱」のとき、ヤドカリは少し思案してからその場を離れ、反対に「強」の場合は一目散に飛びのいて逃げ出したのです。

その違いは、以下の動画でしっかりと確認できます。

同チームのマーク・レードル氏は「ヤドカリは魅力的な貝殻を見つけると、持ち主が弱っているかどうかを観察し、奪える隙を常にうかがっています。

大丈夫だと判断すれば、相手の背中に飛び乗って、中にいる宿主の状態を振動でチェックするのです」と説明します。

つまり、振動が弱ければ中にいる宿主も弱く、強ければ強敵だと判断するというわけですね。

レードル氏によれば、ヤドカリは貝を揺らすことによって「まだ住んでますよ」とか「出て行くつもりはないですよ」といった気持ちを相手に伝えているのだとか。

振動は、ヤドカリ同士の大切な会話として成り立っているのかもしれません。

ただし、話し合いで平和的に解決できない場合も多々あって、ときには激しい争いに発展していくこともあります。

ヤドカリの家探しもかなり大変なようです。

本記事は、2019年4月6日に掲載された記事を再編集したものです。

参考文献
How hermit crabs shake off competitors for shells

元論文
Get off my back: vibrational assessment of homeowner strength

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功