現在、世界人口の約2割が、定期的、慢性的な耳鳴りを経験していると言われます。
今のところ耳鳴りに効果的な治療法はなく、診断も患者の主観的な体験に頼るしかありません。
しかし、オーストラリアの研究チームはこのほど、「耳鳴りを客観的に診断する方法がついに確立された」と発表しました。
これは患者が訴える耳鳴りの重症度を測定する最初のツールであり、新たな治療法の発見に繋がると期待されています。
一体どのような方法なのでしょうか?
研究はバイオニクス研究所、メルボルン大学により、11月18日付けで『PLOS One』に掲載されました。
患者にしか聞こえない音を測定する「fNIRS装置」
耳鳴りは、近年の脳機能イメージング研究により、特定の脳領域における接続性の変化、および神経発火の増加と関連していることがわかっています。
研究チームは、こうした耳鳴りによる脳活動の変化を測定する目的で、「fNIRS(機能的近赤外分光法)」という装置に注目しました。
fNIRSは、自然環境に近い状態で脳の活動を調べられるポータブル装置で、音の知覚にかかわる脳血流活動を測定できます。
2014年に、fNIRSを用いた幻聴の測定テストが初めて実施され、右側の聴覚皮質における血流活性の増加が示されました。
その後の試験でも、前頭前皮質やいくつかの視覚処理領域など、近接する非聴覚領域でも血流活性が増加することが特定されています。
そして、研究チームは2018年に、聴覚皮質におけるfNIRS信号が耳鳴り音の存在と強度の両方を反映していることを示し、耳鳴りの測定への有効性を証明しました。