生物のあらゆる情報が保存されたDNA。
これは現在大量に膨れ上がるデータの保管場所に悩まされている私たち人類にとって、非常に魅力的なデータストレージです。
科学者たちはなんとかこれをうまく利用できないものかと、さまざまな研究を進めていますが、そこに一風変わった利用方法が登場しました。
4月22日に科学雑誌『Nature Communications』で発表された新しい研究は、DNAのデータストレージに遺伝子暗号を使うのではなく、DNA鎖でペグボードを作り情報を物理的なパターンで保存して、顕微鏡を使い光学的に情報を読み戻すという方法を開発しました。
DNAの小さな構造に目を向けて、シーケンス解析などの利用を回避するというのは、なんとも驚きの発想です。
DNAを使った情報の保存と読み出し
DNAをデータストレージとして利用する研究は、現在世界のあちこちで進められています。
たしかにDNAはナノサイズの小さな領域に、化学的に情報を書き込むことで、私たち生物を作り出すための膨大な設計図を保存しています。
これは肥大化し続ける情報化社会にとっては非常に魅力的な題材です。
これまで研究されてきたDNAストレージは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4種類のヌクレオチド(高分子化合物)を利用して01のコンピュータ情報を保存するという方法でした。
これは私たち生物の情報が保存されているのと同じ方法であり、この情報を読み戻すためには、DNAのシーケンス解析によって遺伝暗号を読み取る必要があります。
しかし、DNAシーケンス解析は生物学や医学の強力なツールではありますが、DNAストレージを念頭に置いて設計された技術ではありません。
そこで今回の研究は、DNAストレージを利用する際に、シーケンス解析を必要とせずにデータを読み出す方法を考え出しました。
その方法とは、4種類のヌクレオチドの配列でデータを保存するのではなく、DNAでペグボードのようなものを作り、そこに刻んだパターンを光学的に(見て)読み取るというものです。
ペグボードというのは工具などを引っ掛けたりするのに使う、小さな穴が規則的に空いた板のことです。
これで情報を保存するとは一体どういうことなのでしょう?