現代社会でスムーズに生活するには、パソコンやスマホ、タブレットの操作が欠かせません。
しかし手足を失ったり、身体の一部が麻痺したりすると、操作の難易度が一気に高まります。
アメリカ・カリフォルニア州を拠点とするデバイス開発会社「GlassOuse Assistive Device」の創設者兼CEOのメフメット・ターカー氏は、この課題に取り組んでいます。
彼は、全身麻痺した親友のために、障がいがあっても頭部と口で操作できるというヘッドマウスを開発したのです。
最新機の「GlassOuse PRO」は、クラウドファンディングサービス「Kickstarter」にて支援募集中です。
目次
全身麻痺した親友のために新しいデバイスを開発する
突然体の自由を失う可能性は、誰にでも起こりえます。
もし、それが身近な人に起きた不幸なら、何かしてあげたいと強く思うかもしれません。
ターカー氏の発明は、2016年の初めに彼の親友ケーナ―・セム・マーティー氏に起きた出来事に起因しています。
20歳のマーティー氏はスキューバダイビング中に事故に遭い、頭部から下すべてが麻痺してしまったのです。
この事故によりマーティー氏の人生は一変してしまいました。
親友のことを大切に思っていたターカー氏は、マーティー氏にできるだけ他の人と同じような生活を送り、楽しんでほしいと感じていました。
特に、スマホやパソコンをスムーズに扱えるようになって欲しかったのです。
そこからターカー氏の挑戦が始まりました。
彼は新しい会社を設立し、障がいがあっても電子機器を扱えるような新しい操作デバイスを開発しようとしたのです。
調査と設計に何カ月も費やした結果、頭部でパソコンを操作できるヘッドマウス「GlassOuse V1.1」の開発に至りました。
2022年には、さらに優れた機能を備えた「GlassOuse PRO」を開発しています。
頭部で動かし、口でクリックする「GlassOuse PRO」
健常者は手を使ってマウスを動かし、パソコンを操作しています。
新しく開発されたGlassOuse PROは、頭部装着できる小型マウスなので、手を使うことなく電子機器を操作できます。
メガネのフレームに取り付けるなら、頭部を動かすだけで、電子機器内のマウスポインタを操作可能。
コンパクトなサイズなので、メガネフレーム以外にも、ヘッドホンやキャップなど、装着する対象を自由に変更できます。
状況に合わせてオシャレを楽しんだり、なるべく目立たせない選択が可能だったりするのです。
合計3台の電子機器に同時接続できるため、スマホやノートパソコン、またデスクトップパソコンなど瞬時に切り替えながら操作できます。
またマウスクリックのためのデバイスを、合計8つ接続できます。
歯で噛んで入力するタイプや息を吹きかけるタイプ、他にもボタン型やペダル型など、さまざまなパターンから選べるため、どんな状況の人にも適用できるでしょう。
もちろん、「障がい者用の操作デバイス」というアイデア自体は、そこまで新しいものではありません。
似たようなデバイスを見たことがある人も多いでしょう。
しかし会社設立から現在に至るまでの短い期間で、デバイスが急速に進化している点は評価できます。
進化の秘密は、ターカー氏の次の言葉から理解できます。
「私はいつも同じ質問を投げかけています。
どうすれば親友のケーナ―(マーティー氏)が、より楽に生活を送れるだろうか?」
親友に対するターカー氏の思いが、より便利で実際的なデバイスの開発につながっているのですね。
現在、GlassOuse PROはクラウドファンディングサービス「Kickstarter」にて支援募集中であり、629ドル(約8万4000円)で入手できます。
提供元・ナゾロジー
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