スクワットは簡単なようで、難しく奥が深いエクササイズです。誰もが聞いたことのあるエクササイズですが、完璧に近いフォームで行える人はごく稀です。では正しいフォームで行うにはどうしたらいいのか。井上先生に聞いてみた。

文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>

スクワットのリグレッション

もし、あなたがスクワットを上手く行うことができない場合、上手く行うようにするには2つの方法があります。ひとつはできるようになるまで時間をかけて繰り返し行うこと、もうひとつはスクワットをより簡単に行うため分解して取り組むことです。後者を「スクワットをリグレッションする」という言い方をしています。リグレッションには「簡素化する、原点に戻る」などの意味があります。今回はスクワットのリグレッションについて解説していきます。

①ゴブレットスクワット

意外とできていないスクワット動作!正しいやり方を動きの簡素化でマスターする
(画像=1-1 ケトルベルを用いたゴブレットスクワット、『FITNESS LOVE』より引用)

このエクササイズは骨盤の後方スライド、簡単に言うと殿部を後ろに引くことが苦手な人が行うエクササイズです。胸の前にケトルベルをホールドすることで、この重りがカウンターウエイトになり、殿部を後ろに引きやすくなります。ケトルベル、またはダンベルを(写真1 −1)のように保持します。その状態からお尻を引くというよりは、真下に落とすような感覚で行います。股関節と骨盤を適度に外旋することで、股関節の動きがスムーズになり、膝が前に出ることを防ぎながら殿部を下ろすことができます。このときケトルベルの重りに負けないよう、脊柱はニュートラル(中立)ポジションを維持します。

②ルーマニアンデッドリフト

このエクササイズも骨盤の後方スライドが苦手な人が行います。簡単に言うとデッドリフトはスクワットの動きから膝の曲げ伸ばしを省いた、より簡単な動きと言えます。そのため腰を引くという動作を意識することが容易になります。最初は棒を背中に当て、棒が背中から離れないようにしながら、殿部を後方にスライドして、上体を倒してきます。

殿部を後方に引くことでハムストリングがストレッチされて張力が生まれます。ハムストリングに張力が生まれると、ポステリアチェーンという筋膜の連結で上体との連動が起こり、動作がスムーズになるばかりか、腰痛のリスクを下げることができます。それでも上手く骨盤の後方スライドができない場合、(写真1 −2)のように壁に殿部を付けるようにするとより動作が上手くいきます。

意外とできていないスクワット動作!正しいやり方を動きの簡素化でマスターする
(画像=1-2 壁に殿部をつけるように行うルーマニアンデッドリフト、『FITNESS LOVE』より引用)

慣れてきたら、徐々にバーベルなどの負荷をかけます。バーベルを持つことにより、腹腔内圧を高めやすく、腰痛のリスクを減らすことができます。

③ロッキング

股関節が硬くてスクワットが行えない、または脊柱のニュートラルポジションができない人が行うエクササイズです。(写真1 −3)のように四つん這いの姿勢で行うため、一見スクワットとは程遠いエクササイズであると思われがちですが、写真を90度左回りに回転させるとスクワットの姿勢になるのが分かると思います。

意外とできていないスクワット動作!正しいやり方を動きの簡素化でマスターする
(画像=1-3 四つん這いの姿勢で行うスクワット「ロッキング」、『FITNESS LOVE』より引用)

まずは四つん這いで股関節の屈曲、伸展を行います。動作中、腰が反ったり、曲がったりするということは体幹の固定ができていないのですが、四つん這いになることで基底支持面が広くなり身体が安定するため、体幹の固定が意識しやすくなります。

④スパインヒップフレクション

ロッキングよりさらに、基底支持面を広くしたエクササイズです。仰向けになって行うため、腰が反ってしまった場合、接地感覚で自身でも気付きやすくなります。仰向けになり、両方の肩甲骨が床から離れないようにしながら、片膝を頭方から押さえます。(写真1 −4)の状態から反対の足を屈曲しながら上方に上げ下げします。次に(写真1 −5)では足の重力ラインが体幹に近付いたり、離れたりするので、必然的に体幹にかかる負荷は変化します。

意外とできていないスクワット動作!正しいやり方を動きの簡素化でマスターする
(画像=1-4 徒手で抵抗をかけたスパインヒップフレクションのスタート姿勢、『FITNESS LOVE』より引用)
意外とできていないスクワット動作!正しいやり方を動きの簡素化でマスターする
(画像=1-5 反対の足を上げ下げすると体幹の負荷を自動的に増減できる、『FITNESS LOVE』より引用)

リグレッションの行い方は、スクワットが上手く行えない場合①から④まで順番に進めていき、動作ができれば、また④に戻っていくという手順で行います。①から④に行くことは動作を徐々に簡素化していくので「リグレッション」と言い、④から①に戻るときは動作を進化させていくので「プログレッション」と言います。

もしあなたが不完全な状態でバーベルの重量を上げた場合、身体を痛めたり、重量が伸び悩んだりする原因になります。その場合、焦らずにリグレッションを行い、スクワットをより、完璧に近い状態にしていくことが、さらに進化していくために効果的な手段になるはずです。次回はスクワットのプログレッションについて説明します。


井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/ NSCACSCS/NPO 法人JFTA 理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF 全日本選手権 第6位。
NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会 TEL:078-707-3111

提供元・FITNESS LOVE

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