新型コロナ小康化に伴う米国を中心とした景気回復等に加え、ウクライナ戦争によるエネルギー、食糧の流通不足で世界的に物価高が続伸している。

その中で、日本は景気下落と国債暴落を恐れ、利上げ等の金融引き締めに踏み込めず20年ぶりの円安に見舞われ更なる物価高になり、前門のオオカミと後門のトラに挟まれ身動きが取れない様な状況である。

円安物価高対策のベストミックスを考える
(画像=peshkov/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

2%前後の物価上昇は、アベノミクス開始から日銀がここ約10年間ターゲットとして来たところだが、現下の物価上昇は輸入価格の上昇による悪いインフレ、コストプッシュインフレーションである。なお、それに便乗したと言えば言葉は悪いが、これを契機としたこれまで日本の消費者意識の中で出来なかった分の正当な値上げもある事はあるが、それは一時的なものに留まり持続的な経済成長には結び付きそうにない。

賃金も十分に上がらない中で、そろそろ物価高と景気後退が同時に進むスタブフレーションの恐れも出て来ており、日銀がある程度の金融引き締めに踏み込むべき時ではないか。

景気後退の圧力に対しては、政府が同時にカウンターとしてある意味最大の積極財政である消費税減税を行って、これを打ち消す政策ミックスが現下の最善策であると筆者は考える。

スタグフレーションを避けるためという明確なメッセージを出せば、国債暴落も避けられるのではなかろうか。

また仮に、その後世界情勢が落ち着き、物価上昇が一段落したら消費税率を段階的に元に戻すとした場合は、その際の駆け込み需要も狙えると思われる。

より長期的には、テクノロジー、制度、ビジネスモデルの改良によって、週休3日や4日で70歳、80歳でも働け、年金等に頼る度合いを軽減する社会に移行すべきだし、そうでなければ遅かれ早かれ社会保障は破綻する。その移行の筋道次第では、消費税率は必ずしも全部戻す必要はなくなるかも知れない。

さて、ここまで書いてきて、少なくとも来たる参院選では安全運転のキッシー人気による無風状態で、議論はここの遥か手前までも辿り着かない事は容易に予想される。そして、せいぜい給付金バラマキ程度でお茶を濁し茹でガエルの様にスタグフレーションに陥りそうな風情である。

そんな中で、減税以外の成長戦略としては規制緩和、財政投資があり、このうち財政投資については政府が考えるものでは多くの無駄が生じ得るが、例えば国民民主党の唱える教育国債を発行しての教育投資は僅かに有望なものであるかも知れない。

だが、代表の東大法科卒の玉木氏からは言い出し難いのだろうが、投資がいわゆるFラン大学などに回っては金をドブに捨てる事になってしまう。

教育投資の行く先は、先端技術への投資と並んで、実情は不明なものの元首相を出した遠縁の大平家の援助で東大に進めたとも言われる玉木氏自身が典型例だが、例えば貧困家庭の秀才に厚く集まるような傾斜的なあるいは足切り的な仕組みが不可欠と思われる。

参院選は、前述の様に夏の日本海の様にベタ凪だろうが、それと裏腹に今後の世界と日本を取り巻く状況は更なる波乱が予想される。それに備え外交、内政について少しでも実質的な議論を積み重ねて置くべきだろう。

文・佐藤 鴻全/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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