金融のなかでも、カネではなくモノを貸すオペレーティングリースは大きな可能性をもつ分野である。しかし、貸す側の金融界においては、モノを所有してモノを貸すことにより、モノに関する危険を負担することになる。その前提として、その危険を管理できるのでなければ、オペレーティングリースは供給できない。例えば、技術革新が速くて陳腐化の危険が大きなもの、典型的に半導体製造装置などは、金融界として危険を負担できるものではなく、産業界固有の危険として産業界自身において負担してもらうほかないのである。

シェアリング経済とリースおよびレンタル
(画像=画像:123RF、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

また、モノとしての一般性がないもの、例えば、特定企業向けの仕様をもったものや、モノとしての市場が小さすぎるものもオペレーティングリースの対象にはなり得ない。それに対して、例えば、航空機は、製造業者の寡占が進行しているうえに、少なくともこれまでのところ本質的な技術革新が起きにくく、高度に一般性を備えたものとして、オペレーティングリースの代表例になっているのである。なお、航空機の場合は、高価な機器であり、購入のための資金調達が難しいことも背景にあるだろう。

一般に、航空機と似たような属性を備えたものは、例えば、他の輸送用機器や医療機器のように、オペレーティングリースに馴染み易いのだが、そうでないものは簡単ではない。しかし、金融にも革新がある、いや、あるべきだから、オペレーティングリースの対象資産は、創意工夫により拡大していくはずである。

なかでも、リースからレンタルへという動きは金融にもあり得るだろう。オペレーティングリースの場合は、借り手は、その資産を稼働していなくても、あるいは需要がなくて稼働できなくても、リース期間中、決められたリース料を払い続けなくてはならない。つまり、借り手は稼働率の危険を負担しているのだが、レンタルにすれば、そのリスクを免れる。

しかし、ローリスク、ハイコストという経済原則が働くから、レンタル料を金利に換算した費用はオペレーティングリースよりも遥かに高くなる。それでも、稼働率の危険が大きなものについては、レンタルのほうが借り手に有利な場合も多い。レンタルは、経済的にみれば、一つの資産を多数の借り手でシェアして保有しているのと同じだから、シェアリングという重要な経済の潮流にも適合する。

さて、レンタルは実業であって、金融を超えるのではないか。貸す側の金融界が稼働率の危険を負担するとして、その危険を管理できるのか。おそらくは、金融界として、この限界を超えない限り、本質的な成長はないのではないか。

文・森本紀行/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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