F1に代表されるモータースポーツシーンにおいて、現在ではパドルシフトによるギアチェンジが当たり前ですが、20年以上前まではコンベンショナルなクラッチワークが必要でした。競技ともなればそのテクニックは卓越されたもの。力技ではなく、意外と大人しくも見えるのは理由があるのです。

目次

  1. 卓越したテクニック
  2. ヒールアンドトゥが必須
  3. 丁寧な操作こそ有利
レーシングドライバーのペダルワークは何が凄いのか?
(画像=『CarMe』より 引用)

卓越したテクニック

マニュアルで免許を取得した人にはたまらない映像と言えるかもしれません。クルマのスピードを上げていくには高いギアに切り替えていくために変速が必要で、そのためにマニュアルトランスミッション車の場合はクラッチペダルを踏むことで動力を一時断絶しないといけませんね。

クルマの運転が好きであれば、マニュアルでクルマを操るのは楽しいもの。最近はクラッチ操作を機械がやってくれるMT車も増えてきております。人間がクラッチ操作をするのと機械がするのとではどちらがクルマを速く走らせられるのか…。

その答えはレースシーンを見れば分かるとおり、クラッチ操作から解放された方が運転に集中できるということで、現在のF1を筆頭にクラッチレスが普及してきました。当然、その技術は市販車にも降りてきており、トルクコンバーターを介するオートマチック車に割って入ってきています。

1980年台後半、アイルトン・セナやアラン・プロスト、ナイジェル・マンセルといったスタードライバーがいたF1選手権に、日本人も参戦したことで日本では空前のF1ブームとなったことはご存知のとおり。この頃のF1は市販車と同じクラッチペダルでギアチェンジしていた時代。レースともなれば相当なテクニックが要求されたのです。

ヒールアンドトゥが必須

F1では「セナ足」という言葉が流行りました。アイルトン・セナは一秒間に6回もアクセル・オン・オフができるそうで、コーナリング中の旋回速度を維持し、マシンの向きを脱出方向に変え、且つ脱出速度を早めることから用いられました。

セナの予選での圧倒的な強さはここにもあったわけですね。一秒間に6回なんて超人的な技はさておき、現在の多くのレーシングドライバーが取り入れている技術です。

鈴木亜久里選手のペダルワークは、ヒールアンドトゥを使ったブレーキングが特に印象的。これは、ブレーキングをいち早く終わらせ、すぐに加速体制に入りたいレースシーンではミッション側とエンジン側の回転数を合わせるためには必須のテクニックです。

やり方は右足でブレーキペダルを踏んで減速しながら、左足でクラッチペダルを踏んでクラッチを切ります。それぞれのペダルを踏んだまま、右足のかかとでアクセルペダルを踏み、エンジンの回転速度をトランスミッションと同調させるのです。

これがキマると「オレは運転が上手い」と感じる瞬間でもあります。鈴木亜久里選手のペダルワークはエンジン回転とタイヤの回転を瞬時に合わせており、お見事です。

アクセルワークでは、当然、競技車両は踏めば踏むほど暴力的な加速をしていきます。ハイパワーであるがゆえ、タイヤのグリップに耐えきれないため、スリップをコントロールするのが通常です。エンジンの回転、すなわちタイヤの回転が路面にロスなく伝わる限界ギリギリのところで操作するのがレーシングドライバーと言えます。

丁寧な操作こそ有利

レースシーンにおけるペダルワークは車載カメラを見る限り、力技ではなく小刻みで、素人目には大人しく映るかもしれません。

しかし、競技車両はパフォーマンスを第一に、ドライバーの快適性は二の次ですから、操作系は重く、ストロークも短め。F1カーの横Gがジェットコースターに例えられるように、一般の人が絶叫するシーンの中で競技できるのです。さすがはレーシングドライバーと言えるでしょう。

市販車のNSXやインプレッサの動画では、操作系のストロークは長めでその分、操作がイージーで機械の保護にもなっております。

共通するのは丁寧に、スムーズなペダルワークで尚且つ素早いこと。クルマの挙動は穏やかであったほうがロスなくクルマは推進力を得られますし、スピンなど破綻するリスクも少なくできるわけです。

ナイジェル・マンセルはどちらかというと力技でマシンコントロールをするタイプのドライバーは派手で観客を魅了しますがミスをしたりマシンが壊れたりします。一方でスムーズなドライバーは派手さはないですが、その分ミスが少なくマシンが壊れるリスクも少ないです。どのカテゴリーでも、見受けられるのが面白いですね。

提供元・CarMe

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