2 サンゴ礁はもともと自然変動が激しい
サンゴ礁が危機にある、という報道は、たいてい、「白化」の映像とともに流される。
エルニーニョ現象が起きて海面水温が高くなると、サンゴ礁は大量に「白化」する。これはカラフルだったサンゴ礁が真っ白になってしまう現象で、映像としてはかなりインパクトがある。
しかしこの白化の後、たいていは、速やかにサンゴ礁は復活する。また白化以外にも、サイクロンなどによってもサンゴ礁は大きな打撃をうけ、面積は大幅に低下するが、やがて復活する。サンゴ礁の面積とは、もともと大きく自然変動するものなのだ。
図2は、AIMSによって測定されたグレートバリアリーフのサンゴ被覆率である。サンゴ礁といっても、砂地もあれば海藻が生えている場所もあるので、平均の被覆率は15%から20%前後である。2011年に激減しているのは、サイクロンとヒトデの食害によるもの。一時、被覆率は10%程度まで下がったが、2016年にはすっかり回復していた。
3 サンゴ礁が温暖化で崩壊しない理由
将来に地球温暖化が進むとしても、サンゴ礁が崩壊するとは考えられない、として、リッドは幾つか理由を挙げる。
- 「白化」はサンゴの死ではない
サンゴ礁を作るのは動物であるサンゴであり、それに褐虫藻が共生している。サンゴは褐虫藻に住処を提供する代わりに、光合成で得たエネルギーをもらっている(人間が牛を飼ってミルクをもらっているようなものだ)。この生態が、サンゴ礁の強靭さの秘訣になる。
「白化」とは、サンゴが褐虫藻を追い出すことで起きる。これは新しい環境に適した褐虫藻を迎え入れるための準備だ。サンゴと褐虫藻の組み合わせは無数にあり、多様な環境に適応できる。
サンゴ礁はそもそも暑い場所を好む。
世界でもっともサンゴ礁が豊かな場所はマレーシア、インドネシア、パプアニューギニアを含む「サンゴの三角形」と呼ばれているところだ。ここは世界で最も海水温が高い海域でもある。サンゴは多様な水温に適応する。
サンゴの幼生はプランクトンで、海流に運ばれて、生まれた場所から1000kmも離れたところにたどり着くことも多い。そこの水温は当然生まれた場所と全然違う。それでもパートナーの褐虫藻を探し出し、そこに適応して育つのだ。
4 御用科学がまともな科学を抑圧
オーストラリア政府や御用学者は「サンゴ礁が危機にある」という言説を広めてきた。リッドは以上のような指摘を公然としたために、勤めていたジェームズクック大学の職を追われる羽目になり、法廷で闘争中である。
「きちんと観測をして、データを公開し、互いに批判する」という科学のあるべきプロセスが、「サンゴ礁は危機にある」という御用科学に歪められ、腐っている、とリッドは訴え続けている。
文・杉山 大志/供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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