約2億年前の歯の化石から、最古の哺乳類は、現生の近縁種(ネズミ)よりはるかに長寿命だったことが判明しました。

さらに、10月12日付けで『Nature Communications』に掲載された報告によると、今日の哺乳類とは違い、爬虫類と同じ「変温動物」だったとのことです。

初期哺乳類の生態を化石から直接調査したのは今回が初であり、人類の最初の祖先についての予想が覆された結果となっています。

研究は、イギリス・ブリストル大学とフィンランド・ヘルシンキ大学により発表されました。

目次
近縁のネズミより寿命が10年も長い
爬虫類のように低エネルギーで生きていた?

近縁のネズミより寿命が10年も長い

研究チームが調べたのは、最古の哺乳類とされる「モルガヌコドン」と「ケネオテリウム」の歯の化石です。

ともに現生のネズミに最も近く、専門家たちは長い間、暖かい血を持つ「恒温動物」だと考えていました。

この小さな哺乳類は、洞窟や岩の穴場に落ちたものが化石化しており、発見された個体数もかなり多いです。

本調査では、約200本の歯をX線分析にかけ、寿命や生態を調べました。

人類最初の先祖は”長寿命の変温動物”だったと判明! 新たな化石調査から紐解かれる歴史
(画像=歯の年輪から寿命がわかる / Credit: Nuria Melisa Morales Garcia、『ナゾロジー』より引用)
人類最初の先祖は”長寿命の変温動物”だったと判明! 新たな化石調査から紐解かれる歴史
(画像=近縁のネズミより寿命が明らかに長い / Credit: nature、『ナゾロジー』より引用)

対象となったのは、歯根を歯のソケットに固定する役割を持つ「セメント質」で、生涯を通じて木の年輪のように成長し続けるため、そこから寿命を割り出すことができます。

その結果、モルガヌコドンの平均寿命は14年で、ケネオテリウムは9年と判明しました。

これは現生のネズミの寿命が1〜2年であることを考えると、驚くべき長さです。

爬虫類のように低エネルギーで生きていた?

また、モルガヌコドンの大腿骨から血管の太さや血流量を調べると、外界の温度で体温が変化する「変温動物」であることが特定されました。

変温動物は、いつも外気温と同じくらいの体温でいるため、エネルギーの消費量が少なくて済みます。反対に、恒温動物は、常に一定の体温を保つのでエネルギー消費量は高いですが、同時に行動能力も上がります。

人類最初の先祖は”長寿命の変温動物”だったと判明! 新たな化石調査から紐解かれる歴史
(画像=モルガヌコドンの大腿骨 / Credit: nature、『ナゾロジー』より引用)

これとは別に、モルガヌコドンの血流量は、同サイズのトカゲよりわずかに高く、現生の哺乳類よりはずっと低いことが判明しました。

このことから、研究主任のエリス・ニューハム氏は「最古の哺乳類は、爬虫類のようにスローペースで生きていたが、採餌や狩りに必要な最低限の行動力は持っていたのではないか」と推測します。

一方で、骨格や頭蓋骨など、それ以外の特徴は現生の哺乳類とほぼ同じでした。脳も比較的大きかったので、高い行動能力を持っていたと思われますが、本人たちはそれほど活発には動かなかったようです。

頑張りすぎないのも長生きの秘訣なのかもしれませんね。


参考文献

phys

scitechdaily


提供元・ナゾロジー

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